環境報告書2013
8/20

ニッスイでは育種を充実し、健康な親魚からの種苗生産、健康な種苗の育成とワクチン接種による魚病リスクの軽減を進めています。完全養殖の推進海の生態系への影響を抑える、養殖技術の高度化を図ります。特集 Bio-Diversity~ニッスイと生物多様性~~ニッスイと生物多様性~ニッスイだからできること。「完全養殖」とは、飼育した親魚から採取した卵から生まれた稚魚(人工種苗)を育て、成魚としてから再び卵を採取する技術です。天然の稚魚を採捕する従来の養殖法と異なり、生態系とは独立した魚の育成が可能になります。ニッスイグループの黒瀬水産(株)では、ぶりの人工種苗の育成を進め、日本で初めて「完全養殖」を事業化しました。注目したいのは、生け簀に金網を使用するなど、養殖した魚を逃がさない努力を続けていること。養殖したぶりが逃げ出すと、天然ぶりと交配し、自然の遺伝子構成に影響を及ぼす可能性があります。生態系への負荷を抑えることで、生物多様性の保全を図っているのです。ニッスイグループでは、鹿児島県の南九州市に新たにぶりの人工種苗センターを開設し、「完全養殖」を進めています。「完全養殖」により成長したぶりは、通常の養殖ぶりの端境期に「若ぶり」として出荷されます。「若ぶり」の成功により、生態系に負荷をかけない「完全養殖」がさらに推進できます。ぶりの「完全養殖」の取り組み。ニッスイグループによる養殖技術の高度化は、ぶり以外の魚種でも進んでいます。和歌山県串本ではまぐろの人工種苗の開発を推進し、「完全養殖」の実現を目指しています。また、佐賀県の唐津ではまぐろの配合飼料工場が稼動しており、天然の丸のままの魚を使用せず、水域環境への影響を抑えた養殖が可能になります。ニッスイグループではさらに、銀ざけやとらふぐなどの魚種で養殖技術の高度化を推進。魚が食べたい時に適量の餌を与え水質の汚染をふせぐ「自発摂餌」、タンクを利用した「陸上養殖」の研究など、海の生態系への影響を抑える養殖のイノベーションに取り組んでいます。多様な魚種で、養殖技術の進化を加速しています。ASC認証*とは、WWF(世界自然保護基金)などが2010年に立ち上げた、持続可能な養殖業を証明する第三者認証です。養殖による環境への影響を測定する基準づくりなどを進める円卓会議を実施しており、ぶりのセッションでは黒瀬水産(株)やニッスイが参画。厳しい認証基準をクリアし、日本で初めてのASC認証の取得を目指しています。養殖業にとって海の環境保全は継続的な事業に不可欠であり、生物多様性の保全はそのための大きなテーマです。食の安定供給に貢献するためにも、ニッスイグループは生物多様性に配慮した養殖に取り組んでいきます。*ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)認証持続可能な養殖業を証明する、ASC認証への取り組み。まぐろの配合飼料ぶりの養殖生け簀人工種苗の育成

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です