社会・環境報告書2016
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蒲生 ニッスイグループは今年度から本格的なCSR活動を開始されました。ひと口にCSRといっても、企業によっていろいろなとらえ方や取り組み方があると思います。ニッスイグループは、どのようにCSR活動に取り組むのですか?細見 我々にとっての6つのステークホルダー*に向けCSR行動宣言を作り、外部の声を聞くことからCSR活動を始めています。社外の有識者から意見をいただく一方、ステークホルダーへのアンケートから事業を通じて解決に取り組む重要課題(マテリアリティ)を抽出したところです。蒲生 CSRについて改めて考えた時、マーケティングには3段階の進化のステップがあるということを思い出しました。1段階目は消費者のために良い製品をつくること、2段階目は多様な消費者ニーズに応えて製品の差別化を図ること。この段階まで消費者は受動的な存在ですが、3段階目は企業が消費者と一緒に価値を創造していく関係になります。消費者はCSR活動のパートナーであるという視点から、具体的な課題はどのように考えていますか。*ステークホルダー:お客様、従業員、ビジネスパートナー、環境、株主、社会細見 多方面のステークホルダーから挙げられている意見の一つである「フードロス」は、重要な課題としてとらえています。蒲生 食品会社ならではの課題として、フードロスは悩ましい問題ですね。食品の場合、賞味期限を1日過ぎただけで捨てられてしまうことがあります。消費者も、賞味期限と消費期限の違いや、企業がどのように賞味期限を設定しているかなどを、正しく理解し判断することが必要だと感じます。細見 企業は保存可能な期間に安全率を見込んで賞味期限を決めているので、賞味期限が切れたからといってすぐに食べられなくなるということではありません。蒲生さんは賞味期限を気にするタイプですか?蒲生 食品を買う時、期限表示は必ず見ますし、やはり一日でも新しいものを選びますね。でも開封していない食品が賞味期限を一日でも過ぎると捨てられてしまうとしたらもったいない。まだ食べられるものを捨ててしまうのは資源確保の観点からも問題です。細見 そうですね。消費者が鮮度の高い商品を求めるのは当然ですが、何でも新しいほうがいいという考え方はちょっと違います。例えば缶詰は作ったばかりの状態より、半年から1年経ったほうがむしろ味が馴染んでおいしくなります。消費者が自らの五ステークホルダーへのアンケートから、CSRの重要課題を抽出する。ステークホルダーとの対話を重ねることから、CSRへの本格的な取り組みを始めています。(細見)感による判断を加えることで、行き過ぎた商品の廃棄は減少するのではないでしょうか。東日本大震災を機に大手量販店とも一緒に賞味期限の見直しを進めており、一部缶詰や魚肉ソーセージの賞味期限を見直しています。消費者の方にこうした情報を伝え、一緒になって食品廃棄物の削減を進めていきます。蒲生 出荷した商品に問題が見つかった場合、企業が迅速・誠実に対応するのは当然ですが、その対応は回収・廃棄がすべてではないと思います。合理的な回収基準を持ち、再発防止策もきちんと示すことが企業に求められる姿勢だと思います。細見 生産の現場でも多くの食品残渣が生まれます。生産工場での取り組みは、小集団活動といって現場の従業員でチームを作って工程ごとに廃棄物が出る原因を分析して改善を行い、削減の成果を競い合う活動も推進しています。また発生してしまった食品残渣を肥料にして農家に提供し、米を栽培しておにぎりや弁当などの原料にする、リサイクルループの取り組みを八王子総合工場冷凍食品工場とグループ会社の(株)チルディーで取り組んでいます。食品廃棄物から新しい商品が生まれる、まさにリサイクルの輪です。蒲生 自分たちで課題を見つけて取り組む、すばらしい活動ですね。蒲生 今回発売された機能性表示食品などに含まれるEPA*も、魚をムダなく活用する気持から生まれたそうですね。細見 魚一匹は、魚肉を商品に利用した後、骨や頭など捨てるところが多いのです。それを捨てずに活用しようという考えで、捨てるところをすべて使って養殖魚のエサとなるフィッシュミールを作っていました。その工程から出る魚油に含まれる成分がEPAです。EPAは、血液や血管の健康維持に重要な成分であり、ニッスイグループは、1978年からEPAの健康効果の研究を始め、消費者への情報提供やリサイクルループ、さまざまな側面からフードロスの削減に取り組みます。魚を余すところなく活用する使命感から生まれたEPA。リサイクルループ八王子冷凍食品工場おにぎり・ピラフ製造㈱チルディーおにぎり・弁当製造リサイクル肥料製造業者精米工場 農家精米食品残渣製造用米肥料2Social and Environmental Report2016

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