社会・環境報告書2017
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自然の浄化システムを養殖水槽に取り込んだバイオフロック養殖法を採用。 ニッスイグループは、1933年にクルマエビの養殖研究を始め、同年世界初の人工産卵を行い1939年には完全養殖にも成功しました。その後70年余を経た2011年、中央研究所大分海洋研究センターでは従来の養殖法とは異なる発想でのエビ養殖の研究を始め、バナメイエビ飼育に適した気候の鹿児島県南九州市頴娃(えい)町において、2016年12月、遂に試験養殖を始めることができました。 このエビは透明感があり、水中を自由に泳ぎ回っています。この色白の箱入り娘を大切に育てたいというイメージで、「白姫えび」と名付けました。 従来陸上での養殖は、「掛け流し式」や「循環式」が採用されています。「掛け流し式」はある一定の割合で海水を常時引き込むことで水質を保つ必要があるため、海水使用量が膨大となり環境負荷が大きくなります。「循環式」は水槽と同じような規模の殺菌・浄化設備が必要となるため、エネルギーを多く使用し、コストの面でも課題がありました。 一方、バイオフロック養殖法では浄化設備を使用せず、右図のように閉鎖系の養殖水槽内で発生したフロック(有機物や糞、残った餌とアンモニア性窒素の集合体)を硝化細菌でアンモニアを無毒化することで、水質を安定化させます。使用する水を必要最低限に抑えられるため、排水による環境負荷を低減し、外部からの病原体の侵入リスクも抑えることができます。このような条件下でも生育できるのは、バナメイエビと一部の魚種に限られます。 また、バナメイエビは、水槽内を底から水面近くまで泳ぎ回ることができます。 これらの特性を利用して、限られた空間(水槽)でも高い収率が得られるよう工夫することで、白姫えびを誕生させることができました。環境負荷を抑えた養殖システム。温暖な九州南部で試験養殖をスタート。形成されたバイオフロック白姫えびの養殖水槽。ビニールハウスをかぶせて飼育水温を維持しているバイオフロックと呼ばれる粒子状固形物バイオフロック養殖法の仕組み有機物アンモニア性窒素糞や残った餌硝化細菌硝化細菌がフロックの表面に増殖アンモニア無毒化水質が安定フロックフロックの形成ニッスイグループの最先端の活動特集 白姫えびのバイオフロック養殖法7Social and Environmental Report2017

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