Environment 環境

生物多様性の保全

ニッスイグループは生物多様性を守ることの重要性を考え、2014年に環境憲章を改訂し、行動方針に「生物多様性の保全」の推進をうたっています。
ニッスイグループの強みは、世界各地から水産物をはじめとした素材を調達できる資源アクセスであり、価値創造の源泉となっている一方で、事業活動を通じて自然資本に大きく依存し、また、影響を与えています。地球や海の恵みを受けて事業を営んでいることを常に心にとめ、バリューチェーンにおける生物多様性への依存と影響を把握し、その上で事業活動による負の影響の回避・低減に努めるとともに、復元・再生に取り組みます。

TNFDレポート

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TNFD提言への取り組み

生物多様性の保全は重要な経営課題であると認識し、2023年9月にTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フォーラムに加盟し、2023年12月にTNFD Adopterに登録しました。

外部イニシアティブへの参加​

LEAPアプローチによるリスクと機会の評価

LEAPアプローチ(注)に試行的に取り組み、自然への依存と影響を把握し、リスクと機会を評価しました。LEAPアプローチでは本来、企業がLocateのステップで特定した「優先地域」の自然環境に関してどのように依存し、どのような影響を与えているのかを把握しますが、まずは優先地域を特定せずに、バリューチェーン上流の「漁業」と「養殖」を俯瞰的に評価しました。

(注)LEAPアプローチ:TNFDが開発した、自然関連のリスクと機会を評価するためのガイダンス。分析プロセスであるLocate、Evaluate、Assess、Prepareの頭文字をとったもの。

Locate 自然との接点を発見する

  • 天然水産物(直接操業および調達): FAO漁獲統計海区(FAO Major Fishing Areas)のうち、21海区
  • 養殖拠点(直接操業): 国内32カ所、海外39カ所

Evaluate 依存と影響を診断する

漁業と養殖における自然への依存と影響の関係を整理するため、「ENCORE(注)」を使用した一次評価を行った上で、ニッスイグループの操業実態に合わせた二次評価(定性評価)を行いました。
その結果、漁業では海域や水産資源などの海洋生態系サービスに大きく依存し、漁獲によって水産資源量や生物種に影響を与えていることが分かりました。養殖では、陸域・水域・海域の利用に加え、水温や水質などの生態系調整サービスに大きく依存している一方で、給餌による水質悪化など、養殖場水域の汚染により自然へ影響を与えていることが分かっています。

(注)ENCORE:ビジネスセクターと生産プロセスごとの自然資本への依存と影響を評価するツール。

【図版】Evaluate 依存と影響を診断する

Assess リスクと機会を評価する

Evaluateの自然への依存と影響の評価に基づき、ニッスイグループにとって対応が必要な自然関連のリスクと機会を抽出しました。

リスク/機会 想定される主なリスクと機会 事業インパクト 主な対応策
漁業 物理リスク 水産資源の枯渇化
  • 調達量の減少
  • 調達コストの上昇
  • 資源アクセスのさらなる強化
  • 調達ネットワークの構築
  • 養殖事業の強化
  • 水産物代替原料の開発
移行リスク 漁業規制の強化
機会 持続的調達によるサプライチェーン安定化
  • 収益安定化、販路拡大
  • 調達における資源状態確認
  • 漁業認証取得や認証品の取り扱い増
養殖 物理リスク 風水害の激甚化による事業停止・管理コスト増加
  • 養殖施設の損壊による被害
  • 浮沈式生け簀の導入、施設の補強
  • 陸上養殖への対応強化
魚病の蔓延
  • 魚の斃死による資産喪失
  • 独自の養殖魚健康管理システム(N-AHMS)による予防管理
移行リスク 養殖における環境規制の強化
  • 事業規模縮小や養殖場の閉鎖
  • 罰金や課税による財務影響
  • 養殖漁場の環境モニタリング
  • 飼料・給餌における環境負荷低減
    (EP飼料・自動給餌システム)
  • 沖合養殖への移行
機会 完全養殖技術による天然資源への依存低減
  • レジリエンス強化、競争優位性の確立
  • 技術確立と対応魚種の拡大
陸上養殖技術による海洋環境への負荷低減
スマート養殖による環境負荷低減
  • 養殖コストの低減、養殖成績の向上
  • 労働環境の改善
  • AI・IoTを活用した生産管理
  • 遠隔給餌システムの開発
共通 機会 消費者の購買行動変化
(持続可能性に配慮した製品の需要増加)
  • 売上の拡大
  • 事業の持続性向上、認証品の取り扱い増
  • 丁寧な情報発信

Prepare 自然関連リスクと機会に対応する準備を行い、報告する

ニッスイグループはマテリアリティに「豊かな海を守り、持続可能な水産資源の利用と調達を推進する」を掲げ、水産資源の持続性確保や海洋環境の保全を経営課題と位置付けて取り組んでいます。サステナビリティ委員会の傘下に「水産資源持続部会」、「サステナブル調達部会」、「海洋環境部会」、「プラスチック部会」、「環境部会」の5部会を設置し、部門横断的に対応を行っています。
また、海洋環境および海洋資源の保全と持続的な資源利用を進める国際的なイニシアティブであるSeaBOSに参画し、世界各国の水産業界のリーダー企業や科学者との協働により、課題解決に取り組んでいます。

対象 指標 目標 目標年度
漁業・養殖 持続可能な調達比率 水産物の持続可能な調達比率100% 2030
絶滅危惧種(水産物)の調達 特に絶滅の危険度の高い水産物(注)に関しては、2030年までに資源回復への科学的かつ具体的な対策が取られない場合には、調達を停止
CO2排出量 30%削減(Scope 1,2、基準年度:2018年度)
養殖 ナイロンカバー発泡スチロール製養殖フロートの切り替え実績 海洋へのプラスチック流出リスクの低いフロートへ100%切り替え 2024

(注)IUCN(国際自然保護連合)で定められた絶滅危惧種Ⅰ種(IUCNレッドリストにおけるCR, EN)

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「とっとり共生の森」への参画

おさかなをはぐくむ湧水と海を守る森

鳥取県では、ニッスイのグループ会社である弓ヶ浜水産株式会社が養殖・加工事業を、共和水産株式会社が漁業を営んでいます。弓ヶ浜水産の船上山採卵センターは、同県琴浦町内の大山隠岐国立公園内船上山のふもとに立地していますが、付近の広葉樹林は一部樹木の枯死もあり整備が必要な状態となっていました。
2018年10月30日、鳥取県、琴浦町およびニッスイの3者は森林保全・管理協定を締結し、付近の森林5.933ヘクタールを「おさかなをはぐくむ湧水と海を守る森」と名付けて保全していくこととしました。
また、2020年4月7日、ニッスイグループは、この森林保全活動に対して、国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)から連携事業者として認定を受けました。

【写真】調印式 おさかなをはぐくむ湧水と海を守る森

保全活動

森を守っていくためには継続的な保全作業が必要です。
ニッスイグループでは、2018年の協定以降、従業員参加型の保全活動を毎年実施しています。参加者にとって「森・川・海」のつながりを実感する貴重な原体験の場であり、鳥取県関係者との交流を通して地元の文化に親しみ、グループ会社同士での交流を深める機会ともなっています。

これまでの参加者数
年度 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
参加人数 86名 104名 31名 27名
(みどりの少年団(注)+
引率教員・県関係者ほか)
37名 73名

(注)みどりの少年団:公益社団法人鳥取県緑化推進委員会が主催。次代を担う子どもたちが、緑と親しみ、緑を愛し、緑を守り育てる活動を通じて、ふるさとを愛し、そして人を愛する心豊かな人間に育っていくことを目的とした団体。

これまでの植樹本数(現地の樹種から選定)
  トチノキ イタヤカエデ ヤマザクラ
2018年度 110 105 110
2019年度 10 10 10

2021年度からは鳥取大学と協働し、より科学的な保全活動にするべく、森林調査を行いました。その結果、2018-2019年度活動にて植樹した苗木のうち約80%が2021年時点で活着しており、生育も良好であることがわかりました。また「おさかなをはぐくむ湧水と海を守る森」内外の植生を改めて調査し、2022度以降の植樹活動ではさらに現地の植生を生かしながら森づくりを行うこととしました。より自然に近い森を築き、また合理的な森林保全となるよう活動をブラッシュアップしていきます。

2023年9月24日、弓ヶ浜水産、共和水産など中四国地方にあるニッスイグループの事業所や鳥取県関係者から参加者を募り、通算第6回目となる保全活動を行いました。「みどりの少年団交流集会」も同日に開催され、参加した小学生18名に対してニッスイグループの事業紹介や「森・川・海」に関するレクチャーを行いました。 当日は、弓ヶ浜水産8名、共和水産21名、ニッスイ中四国支社3名、鳥取県4名、鳥取県中部森林組合7名、鳥取県中部総合事務所1名、琴浦町1名、公益社団法人緑化推進委員会3名、みどりの少年団関係者20名、事務局としてニッスイ5名の総勢73名の参加となり、約45分間下草刈りで汗を流しました。

【写真】とっとり1
【写真】とっとり2
【写真】集合写真
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「こうでら健康の森」

ニッスイの森

2023年10月2日、兵庫県、姫路市、公益社団法人兵庫県緑化推進協会とニッスイの4者で、「企業の森づくり活動への取り組みに関する協定」を締結しました。この協定に基づいて、活動主体となるニッスイの姫路総合工場が森林保全活動に参画し、水源の涵養や地球温暖化防止などの森林の公益的機能の増進を図る取り組みを行っています。
同工場は、工場使用水を取水している市川の流域にある「こうでら健康の森」を活動地域として「ニッスイの森」と命名し、水源涵養と地域社会との共生や従業員の環境意識向上を目的とする森林保全活動を2023年11月より開始しました。年2回程度、下草刈りや森林教育イベントを森林ボランティアにレクチャーを受けながら実施していきます。

【写真】こうでら健康の森
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宇津貫緑地の保全活動

宇津貫緑地は、2011年に建設された東京イノベーションセンターに隣接する里山で、ホタルが生息するなど、自然の宝庫でもあります。
2013年からは毎年、「宇津貫みどりの会」の指導のもと、事業所周辺の自然環境保全および地域社会との共生を目的とした活動を行っています。活動内容はその年によって異なりますが、敷地内にあるログハウスで行う「森・川・海」のつながりや里山に生息する植物や動物に関する座学や、里山での下草刈りなどといった野外作業を実施しています。

2022年11月12日、第9回の活動を実施しました。新型コロナウイルス感染症対策のため開催規模を抑え、ニッスイの従業員12名の参加となりました。当日は、3つのグループに分かれて里山の散策を行いました。宇津貫みどりの会の方から、森の木々や生息している野鳥の話を聞き、約1時間歩いた後、緑地内の階段修理と下草刈りを行いました。

【写真】宇津貫緑地1
【写真】宇津貫緑地2
【写真】宇津貫緑地3

なお、ニッスイは2015年度より「宇津貫みどりの会」の賛助会員となっています。

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