フードロスとは、まだ食べられるはずの食品が捨てられてしまうことです。現在、世界のフードロス発生量は年間で13億トンと言われています(注1)。日本では、食料自給率はカロリーベースで約37%(2018年度)と低く(注2)、多くを輸入に頼っていますが、その一方で2017年度には年間612万トンものフードロスが発生しています(注3)。また大量の食品が廃棄されている現状とは反対に、世界には依然として飢餓の問題が存在し、深刻な飢えや栄養不足に陥っている人々が約8億人いるとされます(注4)。
ニッスイグループは食品を取り扱う企業の責任としてフードロス削減を掲げ、フードロス部会を中心に、国内事業所の生産・流通・消費段階におけるフードロス削減、従業員の意識向上、一般消費者を対象とした活動など、サプライチェーン全体を通した取り組みを行っています。
(注1):FAO(国際連合食糧農業機関)「世界の食料ロスと食料廃棄」(2011年)
(注2):農林水産省「平成30年度食料需給表(確報)」(2020年)
(注3):農林水産省、環境省、2017年度推計
(注4):FAO(国際連合食糧農業機関)「世界の食料安全保障と栄養現状2019年報告」(2019年)
*フードバンク:品質に問題はないものの販売に適さない食品と、食べ物を十分に手に入れることのできない人々を結ぶ団体。
2019年5月、日本では食品ロス削減推進法が公布されました(2019年10月施行)。その中で言及されているSDGsのターゲット「2030年までに食料廃棄を半減させる」への貢献はもちろんのこと、法律で記された事業者の責務を真摯に受け止め、これまで以上に積極的にこの問題に取り組んでいきます。
フードロス部会では、国内グループ全体で事業におけるフードロス削減と従業員の意識向上のための取り組みを進めています。
長期ビジョン「Good Foods 2030」/中期経営計画「Good Foods Recipe1」における目標は下記の通りです。自助努力で削減可能な動植物性残渣(生産過程で発生する魚の非可食部や、野菜の芯や外葉などを除く)および製品廃棄量に関して目標を設定し、取り組みを行っています。
指標 | 対象範囲 | 実績 | KPI | ||
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2022年度 | 2023年度 | 2024年度目標 中期経営計画 「Good Foods Recipe1」 |
2030年度目標 長期ビジョン 「Good Foods 2030」 |
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動植物性残渣 (基準年度:2017年度、単位:原単位) |
ニッスイ 国内グループ |
21.1%削減 | 21.1%削減 | 20%削減 | 30%削減 |
製品廃棄量 (基準年度:2020年度、単位:総量) |
ニッスイ個別 | 17.6%増加 | 9.3%削減 | - | 50%削減 |
フードロス削減のため賞味期限表示を見直す取り組みを進めています。2019年7月1日製造分より、プライベートブランド品を除くすべての缶詰製品で賞味期限の年月表示化を開始しました。その際には、品質が保たれているかどうかをチェックする保存試験を行い、賞味期限の延長が可能なことを確認しています。これらの効果として、サプライチェーン全体でのフードロス削減に加え、物流における効率化が期待されます。
また、おさかなのソーセージや、ねり製品の香味焼シリーズ、常温食品について、官能評価および科学的分析により品質への影響がないことが確認できた商品について、別表のとおり賞味期限を延長しました。家庭用・業務用の冷凍食品などでも賞味期限の大幅延長に取り組んでいます。
商品 | 生産切り替え日 | 賞味期限 | 延長日数 | |
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延長前 | 延長後 | |||
おさかなのソーセージ | 2021年2月15日 | 120日 | 150日 | 30日 |
香味焼 焼がに風味、焼ホタテ風味 | 2022年2月7日 | 45日 | 60日 | 15日 |
瓶詰商品(グループ会社生産品) | 2022年2月 | 12カ月/18カ月 | 18カ月/24カ月 | 6カ月 |
レトルトパウチ商品(スープ類) | 2022年4月 | 18カ月 | 24カ月 | 6カ月 |
2008年度より、支援の必要な人々に食料を提供するNPO法人セカンドハーベスト・ジャパンへ冷凍食品を寄贈しています。セカンドハーベスト・ジャパンとは、品質に問題はないものの販売に適さなくなった食品と、食べ物を十分に手に入れることのできない人々を結ぶフードバンクです。児童養護施設や母子支援施設など福祉施設への支援とともに、本来なら食べられる食品の廃棄削減につながるこの活動を、今後も継続的に行っていきます。
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
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寄贈実績(t) | 7.9 | 9.0 | 7.7 | 7.9 | 6.0 |
寄贈先 | 寄贈元 | 寄贈内容 | 寄贈実績(kg) |
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セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン | 家庭用食品部 | 子どもの食応援BOXへの常温食品の提供 | 846 |
全国食支援活動協力会(MOWLS) | 事業開発部、法務部、安城工場 | 乳製品、魚肉ソーセージ、冷凍食品 | 3,400 |
やまがた福わたし | モガミフーズ | 冷凍食品 | 160 |
ニッスイは2019年12月にWRI(World Resources Institute、世界資源研究所)が呼び掛ける「10×20×30食品廃棄物削減イニシアティブ」へのイオン株式会社の参画に伴い、同社のサプライヤーであることから、同社主導の「日本プロジェクト」にパートナーの1社として参加しました。このプロジェクトではWRIが提唱する「目標設定・算定・行動」の取り組み手法を元に、先行して取り組む海外の事例などを参考に、自社の課題をふまえ、具体的な取り組み内容を決定していきます。2022年度より新たに、2030年までに製品廃棄を50%削減(2020年度比、ニッスイブランド商品対象)する目標を掲げました。この取り組みを通じて、サプライチェーン全体でのフードロス削減をさらに推進していきます。
ニッスイの海外グループ会社であるフラットフィッシュ社(英国)は2021年にWRAP(the Waste and Resources Action Programme、廃棄物および資源行動プログラム)への支援を表明しました。WRAPは2000年に英国で設立されたイニシアティブで、取り組みの一つとしてフードロス削減のためのツールやガイダンスを提供しています。フラットフィッシュ社では、2021年よりフードロス量の測定を開始し、2030年までにフードロスを50%削減する目標を掲げ、取り組んでいます。
2022年10月、グループ会社の黒瀬水産株式会社が生産する「黒瀬ぶり」の加工時に発生する尾肉を有効活用した缶詰を開発し、地域限定で販売をスタートしました。これまで、水揚げ後のブリが加工場でフィレーやロインに加工される際には、年間約30トンの尾肉が発生していました。従来、尾肉は飼料として活用されていましたが、この缶詰はそれらを原材料とすることで、フードロス削減に貢献しています。
缶詰「ぶり大根 黒瀬ぶり尾肉使用」
フードロス削減に向けた従業員への意識啓発の取り組みとして、2023年度サステナビリティ推進委員向けの研修の一環として、以下の2つの取り組みを実施しました。
「少しでも無駄になるお米を減らしたい。」そのような思いから、未熟米・虫食い米・食用に適さない古米・賞味期限切れの災害用備蓄米・工場の選別工程で排除された米などの廃棄される米をニッスイの各部署から集め、廃棄米を原料とした紙ファイルを作成しました。作成した紙ファイルはグループ会社を含めた従業員へ思いとともに配布しました。
作成したファイル
2023年12月、サステナビリティ推進委員の関心が高かった「フードロス」をテーマに、課題解決に取り組む有識者による講演を実施しました。講義を通じたフードロスの情報、新しい視点、知識のインプットに加え、グループディスカッションと講師からのフィードバックを通じて課題解決に向けて何ができるかを考えました。食品ロスを「良い廃棄」にするには?などの講師からの問いかけに多くの意見が寄せられていました。
外部講師による講演の様子