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「食」の可能性を追求し、未知を切り拓く【人物写真】株式会社ニッスイ 社長 浜田 晋吾

ニッスイは2022年4月、長期ビジョン「Good Foods 2030」を策定し2030年のありたい姿を明快にするとともに、その実現に向けた最初のレシピとなる3カ年中期経営計画「Good Foods Recipe1」を発表し、新たな一歩を踏み出しました。同時に、ミッションを掲げ、ブランドシンボルとタグラインを新たに導入しました。

リブランディングと新社名への想い

私たちは水産を祖業とする企業グループですが、現在は水産事業のみならず食品事業、ファインケミカル事業も手掛けるなど、幅広い事業を展開しています。リブランディングと長期ビジョンの検討プロセスで、私たちはステークホルダーの皆さまや社会から何を期待され、何を提供していくべきなのか、という議論を何度も重ねました。その結果、水産物に拘らない「食の提供」が本質であり、その食によっておいしさや豊かさを提供する、健康になる、サステナブルな未来につながっていく、ということだろうとの結論に至りました。私たちの新たなミッションは、食の可能性を追求し続ける企業グループとして、110余年の歴史で積み上げてきたグローバル志向やイノベーションへの姿勢に加え、未来を見据えて進んでいく決意を示しています。

一方で、海への感謝とリスペクトを失うことはありません。水産資源へのアクセス、R&D、生産・品質管理、マーケティングに至るまで、現在のグローバルな事業基盤は、水産事業によって築かれてきたものです。この事業基盤を新しい“食”に活かし、ニッスイグループだからこそ実現できるシナジーや価値を生み出していきたい。この想いを、私たちの新たなミッションとして共有し、「心と体を豊かにする新しい食」「社会課題を解決する新しい食」をグローバルに展開していきたいと考えています。

では、私たちが提供していく新しい“食”とは何か。これは、私たちにとっても「まだ見ぬ食」なのです。今まで見たことがない食べ物が出てくるイメージではなく、既存のものでも新たな切り口で価値を付加したり、新たな食文化につながる取り組みなど「食の新しい可能性を見出す」ことと私たちは捉えています。私は社長として、まずグループ企業に自ら語り掛け、こうした想いを従業員に伝えて理解・浸透を図り、新しい“食”を全員で作り上げるための土壌を整えていきます。そして、従業員全員で新しい“食”を考え、挑戦したいと思っています。

リスク・機会の両面で重要なサステナビリティ

環境価値に関わるテーマは、自然資本への依存度が高いニッスイグループにとってリスクと機会の両面において極めて重要な課題であり、危機感を持って取り組んでいく必要があります。気候変動対応については、2021年11月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、部門横断プロジェクトを組んで気候変動リスクや機会とその財務影響について検討を重ねてきました。2030年試算では、炭素税や設備投資など移行・物理リスクが一定の財務影響を及ぼすものの、リスク対策と機会の獲得により成長を保持できる見通しができ上がりつつあります。今後、対応策を着実に実行し、常にレジリエントな状態を目指しながら、バリューチェーン全体の脱炭素化を進めることが重要になるでしょう。長期ビジョンの2030年目標では、CO2排出量(Scope 1, 2)30%削減(2018年度比・総量)を掲げています。そして、大きな決断として2050年カーボンニュートラル実現(Scope 1, 2)を打ち出しました。現実問題として、水産業のカーボンニュートラルは非常にハードルが高く、例えば漁船は重油の代替となる燃料に変えていかねばなりません。目標達成には技術的なブレークスルーが不可欠であり、官・民・学合わせての取り組みが必要になり、常にアンテナを張っていきたいと思います。

環境価値のもう一つの大きなチャレンジが、水産資源の持続可能性を高める取り組みで、2030年目標として持続可能な調達比率100%を掲げました。私たちは2017年、世界の大手水産会社に先駆け、国内外のグループ会社全体が調達した水産物の資源状態について調査を実施しました。2020年に実施した2回目の調査では、調達した天然水産物のうち71%において資源管理が行われていることを確認しています。今後は、この比率を2030年までに100%にすべく、調査すらなされていない魚種では調査を開始し、課題魚種については、可能なものは認証品など持続性が確認できるものへ切り替え、変更が困難なものについては資源状態の改善活動に関与していく計画です。水産資源の問題は、個々の会社が単独で取り組んでも完全には解決できません。ステークホルダーが協力し合い、調達の健全性を担保するプラットフォームを構築するといったことが必要になるでしょう。当社グループも、そうした仕組みづくりに積極的に貢献したいと考えています。当社グループの事業活動は自然資本に大きく依存しており、また大きな影響を与えています。今後はTNFD(自然関連財務情報タスクフォース)への対応を通してリスクと機会を特定し、経営に反映させることで事業のレジリエンスを高めていきたいと考えています。海洋プラスチック問題など海洋環境保全にも大きな影響を与えるプラスチックについては使用量を30%削減(2015年度比・原単位)する2030年目標を掲げ、取り組んでいきます。

社会価値の重点テーマの一つ目は、健康課題の解決です。2030年度に健康領域商品の売上高を3倍(2021年度比)に拡大する目標を掲げました。EPAをはじめとした健康に寄与する明確なエビデンスのある商品や原料、特保など保健機能食品として認可されたもの、健康に寄与する商品としてエビデンスを用いて販売する商品、例えば速筋タンパクなどを「健康領域商品」と定義し、マーケット拡大を図ります。さらに代替タンパクは、健康だけでなく環境負荷削減に貢献し、新たな食文化につながる可能性があり、これからの拡がりに期待しています。私たちも積極的に取り組んでいく考えです。

また、水産業特有の問題であるIUU漁業は、人権問題との関連も指摘されています。サプライチェーンの人権尊重は環境価値とともに社会価値の創出にもつながると考えていることから、もう一つの社会価値目標として、グループの主要な1次サプライヤーのアセスメント比率100%を掲げています。

持続的な企業価値向上を目指す

ニッスイグループは、2030年を通過点として次の100年に向けてスタートします。私たちには、海で培ったモノづくりの心、メーカーとしての矜持があります。これらを次の世代に受け継ぎながら、今までの枠組みを超えて世界中のより多くの人々に新しい“食”をお届けし、健康的で豊かな生活と、サステナブルな社会の実現に貢献します。そのために、経済・環境・社会・人財の4つの価値を高め、企業価値向上を目指します。ステークホルダーの皆さまには、ニッスイグループのさらなる飛躍にご期待いただき、一層のご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

2022年9月

system, 株式会社ニッスイ サステナビリティ推進部, 外部協力者, 株式会社ニッスイ コーポレートコミュニケーション部