Environment 環境

海洋プラスチック

漁具の海洋流出防止の取り組み

現在、海洋プラスチックごみの一部は紛失・遺棄された漁具であることが明らかになっています。これらはゴーストギアやALDFG(注1)などと呼ばれます。ニッスイはSeaBOS(注2)を通してGGGI(注3)に加盟するとともに、国内グループ養殖・漁業会社で使用する漁具の海洋流出防止に取り組みます。

(注1):Abandoned, Lost or otherwise Discarded Fishing Gear.
(注2):Seafood Business for Ocean Stewardship.
(注3):Global Ghost Gear Initiative、漁具の海洋流出防止に取り組む国際団体。

漁具の管理ルールの強化

ニッスイグループでは、漁具の管理を徹底することにより、漁具の海洋流出を防止するだけでなく、漁具の破損事故(操業ロス、養殖魚の逃亡など生態系への影響)と労働災害の削減につなげていきます。
わたしたちは、国内グループ養殖・漁業会社の全社で、漁具の管理ルールの強化を進めています。自社の既存の漁具の管理ルールを、GGGI「Best Practice Framework for the Management of Fishing Gear」(漁業関係者を対象とした漁具管理のガイドライン。Prevention(防止)、Mitigation(緩和)、Remediation(回復)から構成されている)を参考にし、漁具の海洋流出防止という観点で改めて見直しました。この漁具の管理ルールは、設備状態のチェック、従業員への教育、使用済み漁具の適切な廃棄、万が一漁具の紛失・遺棄があった際の報告フロー等を含みます。

これまでの取り組み

【取り組み - Prevention(防止)】

  • 漁具の設備状態のチェック項目と交換基準の整理: 自社の各漁具を対象とし、点検のチェック項目と交換基準を再確認(ⅰ目視点検、ⅱ耐用期間、ⅲ数値基準)
  • メンテナンス記録を導入: 漁具のメンテナンス記録を漁具の管理に活用
  • 使用済み漁具の適切な処分: 法律にのっとり、使用済み漁具を産業廃棄物として適切に処分をしていることを確認
  • 台風通過前後のチェック: 台風の影響を受けやすい養殖場では、台風通過前後に漁具のチェックを実施
  • 従業員への教育の実施: 海洋プラスチック問題について各社で従業員への教育を実施することをルール化(1回/年以上)。実績は下記の通り
従業員への教育の実施状況
  2021年度 2022年度
国内グループ
養殖会社
国内グループ
漁業会社
国内グループ
養殖会社
国内グループ
漁業会社
実施社数 6/6社 1/1社 6/6社
実施回数 13回 2回 12回
参加人数 243人 21人 342人

【取り組み - Mitigation(緩和)】

国内グループ養殖・漁業会社では漁具の紛失・遺棄があった際の報告フローおよび報告内容を統一を行っています。漁具の紛失・遺棄があった場合、各養殖会社・漁業会社の現場から会社代表へ、その後ニッスイの執行役員まで報告することを義務づけています。社外に対しては、関係する団体などへ報告することとしています。報告すべき内容についてもグループ共通とし、基本情報(いつ、どこで、何を、どのように、なぜ)の他、回収の可能性や今後の防止策を含みます。漁具の流出が発生した場合には、これらの報告の徹底と、再発防止に取り組みます。

漁具の流出報告​

【取り組み - Remediation(回復)】

台風など自然災害の後の海岸漂着物が大きな問題となっています。中にはフロートなど漁具を含むプラスチック類もあり、景観や海岸環境に影響を及ぼしていることはもちろん、その処理には多くのコストや人員が必要になります。ニッスイグループでは、自社で漁具の流出が発生した場合、可能な限りその回収に努めます。

海洋へのプラスチック流出リスクの低いフロートへの切り替え

ニッスイグループの目標
2024年度末までに養殖用のナイロンカバー発泡スチロール製フロートの使用を止め、より海洋へのプラスチック流出リスクの低いフロートへの切り替えを完了させます。

ニッスイグループは海外ではサケ・マス、国内ではブリ、カンパチ、マグロ、ギンザケ、サバなどの養殖事業を行っています。従来、国内の海面養殖ではナイロンカバーで包まれた発泡スチロール製フロートが多く使われてきましたが(注1)、わたしたちはこのナイロンカバーが他のフロート類と比べて強度の面で劣り、万が一カバーが破れてしまった場合、中の発泡スチロール(ポリスチレン)が砕け、海洋へ流出してしまうリスクがあることを問題視しました。そこで2019年度、グループ全体におけるナイロンカバー発泡スチール製フロートの保有量・使用状況を調査しました。そしてニッスイグループとして、2024年度末までに、それらの使用をすべて止め、より海洋への流出リスクの低いフロート(注2)への切り替えを完了させることを決定しました。グループ全体でより海洋流出リスクの低い漁具使用の検討を進め、事業を通して海洋プラスチック問題の改善に取り組んでいきます。

【写真】海面養殖場のフロート

海面養殖場のフロート

【切り替え前】ナイロンカバー発泡スチロールフロート
【切り替え前】ナイロンカバー発泡スチロール製フロート
【切り替え前】ナイロンカバー発泡スチロール製フロート

【切り替え前】ナイロンカバー発泡スチロール製フロート

 
【切り替え後】PEコーティングされた発泡スチロールフロートや中空樹脂フロート
【切り替え後】PEコーティングされた発泡スチロールフロートや中空樹脂フロート

【切り替え後の例】PEコーティングされた発泡スチロール製フロート

(注1):海外グループ会社の海面養殖場では、ナイロンカバー発泡スチロール製フロートを使用していないことが確認できている。
(注2):PEコーティング発泡スチロール製フロートや中空樹脂フロート。

system, 株式会社ニッスイ サステナビリティ推進部, 外部協力者, 株式会社ニッスイ コーポレートコミュニケーション部, 株式会社ニッスイ 人事部人事課

漁具のリサイクル

ニッスイの海外グループ会社であるシーロード社(ニュージーランド)は漁業を行っています。シーロード社では、同じくニュージーランドのMotueka Nets社と協働し、自社で使用する漁網についてリサイクルを進めています。従来、シーロード社では使用済みの漁網を埋め立て処分していました。漁網は金属や複数の種類のプラスチックから構成されており、漁網を解体し素材ごとに分別しなければリサイクルができず、この解体には多大な労力が必要だったためです。シーロード社とMotueka Nets社は協力し、漁網の解体と分別、リサイクルを可能にしました。

漁網の解体とリサイクルの流れ
【図】漁網の解体とリサイクルの流れ
【写真】Sealord社の漁網1

Sealord社の漁網1

【写真】Sealord社の漁網2

Sealord社の漁網2

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海洋プラスチックごみのアップサイクル事業へ参加

アップサイクルとは、廃棄物や不用品など捨てられるはずだったものを生かし、別の製品に生まれ変わらせることです。2021年度、ニッスイは山口県と株式会社丸久およびテラサイクルジャパン合同会社とともに、海洋プラスチックごみを活用した官民連携のアップサイクル事業「ONE FOR OCEAN」への取り組みをスタートしました(本事業は環境省「令和3年度ローカル・ブルー・オーシャン・ビジョン推進事業」のモデル事業に採択されています)。2022年度、この事業への協賛企業は、ニッスイを含め8社に増えました。海岸清掃活動では県民、民間団体、企業などから14,402人が参加、65トンの清掃ごみと411個の海洋ごみを回収し、当事業に貢献しました。

本件のニュースリリース

「ONE FOR OCEAN」の流れ(2021年度の例)

【図版】「ONE FOR OCEAN」の流れ

【写真】披露イベントの様子

披露イベントの様子(2021年12月11日)
(左から) 小野雅充 ニッスイ 中四国支社長(当時)、村岡嗣政 山口県知事、田中康男 丸久社長、エリック・カワバタ テラサイクルジャパン代表

【写真】アップサイクル買い物かご

アップサイクル買い物かご

【写真】ONE FOR OCEAN ポスター

「ONE FOR OCEAN」 ポスター

【写真】日韓海峡海岸漂着ごみ一斉清掃(山口県長門市大浦海岸)

日韓海峡海岸漂着ごみ一斉清掃(山口県長門市大浦海岸)(2022年5月22日)

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プラスチックの海洋流出問題に取り組むベンチャー企業(株式会社ピリカ)への協賛

プラスチックなど海洋ごみの発生源は都市を中心とした陸域とされていますが、それらの流出ルートは解明されていません。2018年度より、ニッスイはプラスチックの海洋流出問題の実態解明を目指す「アルバトロス」プロジェクトに取り組む、株式会社ピリカへの協賛を行い、自社の事業に直結する海の環境問題・プラスチック海洋流出問題への具体的なアプローチをスタートさせています。

プラスチックの海洋流出問題の実態解明を目指す「アルバトロス」プロジェクトの内容

●STEP1

調査手法の確立…海洋へのプラスチック流出について有効な調査手法を開発する

●STEP2

流出メカニズムの解明…海洋へのプラスチック流出メカニズム(流出経路と流出品目)を調査し、問題を絞り込む

●STEP3

対策の検討と実施…海洋へのプラスチック流出問題について優先順位の高い順から対策を検討し、実行する

【写真】株式会社ピリカ

株式会社ピリカ

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