ニッスイグループは生物多様性を守ることの重要性を考え、2014年に環境憲章を改訂し、行動方針に「生物多様性の保全」の推進をうたっています。 ニッスイグループの強みは、世界各地から水産物をはじめとした素材を調達できる資源アクセスであり、価値創造の源泉となっている一方で、事業活動を通じて自然資本に大きく依存し、また、影響を与えています。地球や海の恵みを受けて事業を営んでいることを常に心にとめ、バリューチェーンにおける生物多様性への依存と影響を把握し、その上で事業活動による負の影響の回避・低減に努めるとともに、復元・再生に取り組みます。
漁業では、本来目的とする魚ではない、海鳥や海獣類の偶発的な捕獲が課題視されています。ニッスイグループでは、それぞれの漁法における混獲のリスクを理解するとともに、防止のための取り組みを進めます。また、SeaBOS(Seafood Business for Ocean Stewardship、持続的な水産ビジネスを目指すイニシアティブ)でも当テーマを扱っており、他のメンバー企業とともに現状の把握と改善に努めます。
ニッスイグループの漁業会社では、海鳥の混獲防止のために広く使用されているトリライン(注)を導入している他、漁法に合ったさまざまな工夫を行っています。また、国や漁業海域で混獲防止に関する制度がある場合は、それらに従い事業を行っています。
(注)トリライン:漁船の船尾に取り付けた長い棒の先から吹き流しやテープを付けたロープを曳航(えいこう)し、鳥が餌に近づけないようにする仕掛け。トリポールともいう(出典:WWFウェブサイト)。
チリでトロール漁業を行うエムデペス社は、海鳥が、船尾から海中にのびるワイヤーに衝突することを防止する為、滑車付き錘(おもり)をつるし、当該ワイヤーを船尾直近に水没させる工夫を行いました。これにより海鳥の空中でのワイヤー衝突に関しては、従来と比較して約80%削減することができています。この取り組みは、チリの漁業省へ報告を行い、良案との評価を得ました。また、エムデペス社の漁船は、海獣類(オットセイ、アザラシ等)の混獲防止装置も装着しており、この効果により海獣類の混獲はゼロとなっています。
漁具監視センサー用ワイヤーと錘
ニュージーランド・オーストラリアでトロール漁業を行うシーロード社は、Southern Seabird Solutions Trust (注)の創設メンバーであり、海鳥の混獲防止に取り組んだ漁業者への表彰制度である「Seabird Smart Awards」を支援しています。シーロード社自身も2010年にF.V. Thomas Harrison号にて、Seabird Safe Awards 2010を受賞しています。海鳥の偶発的捕獲を防止するために以下のようなさまざまな対応策を実施しています。
(注)Southern Seabird Solutions Trust:WWF、漁業者、政府の革新的な同盟。南洋船団の漁業者が責任ある漁業慣行を採用することを支援および奨励し、漁業によるニュージーランドの海鳥への害を減らすために、南半球の漁業において、漁業が海鳥に及ぼす影響の軽減に貢献するプロジェクトを提供している。
海鳥
バフラー
トリライン
オーストラリアで底延縄漁業を行うオーストラリアン・ロングライン社では、船内にムーンプールという装置を導入しています。ムーンプールとは、船底に開けられた円形の穴のことです。延縄漁船で、ムーンプールからラインを巻き上げることにより、甲板での作業の場合と比較し、野鳥を巻き込むリスクが低下します。また船員の安全確保にもつながります。
ムーンプール
ニッスイも含め、SeaBOSのメンバー企業は、事業を行ううえで絶滅危惧種への影響を減らす方針に関して合意しています。絶滅危惧種への対応をテーマとするタスクフォースでは、漁業/養殖業で、まずサメ、エイ類、海鳥から、絶滅危惧種の混獲防止の取り組みを進めることを決定しています。
鳥取県では、ニッスイのグループ会社である弓ヶ浜水産株式会社が養殖・加工事業を、共和水産株式会社が漁業を営んでいます。弓ヶ浜水産の船上山採卵センターは、同県琴浦町内の大山隠岐国立公園内船上山のふもとに立地していますが、付近の広葉樹林は一部樹木の枯死もあり整備が必要な状態となっていました。
2018年10月30日、鳥取県、琴浦町およびニッスイの3者は森林保全・管理協定を締結し、付近の森林5.933ヘクタールを「おさかなをはぐくむ湧水と海を守る森」と名付けて保全していくこととしました。
また、2020年4月7日、ニッスイグループは、この森林保全活動に対して、国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)から連携事業者として認定を受けました。
森を守っていくためには継続的な保全作業が必要です。
ニッスイグループでは、2018年の協定以降、従業員参加型の保全活動を毎年実施しています。参加者にとって「森・川・海」のつながりを実感する貴重な原体験の場であり、鳥取県関係者との交流を通して地元の文化に親しみ、グループ会社同士での交流を深める機会ともなっています。
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
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参加人数 | 86名 | 104名 | 31名 | 27名 | 37名 | 73名 | 66名 |
トチノキ | イタヤカエデ | ヤマザクラ | |
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2018年度 | 110 | 105 | 110 |
2019年度 | 10 | 10 | 10 |
2021年度からは鳥取大学と協働し、より科学的な保全活動にするべく、森林調査を行いました。その結果、2018-2019年度活動にて植樹した苗木のうち約80%が2021年時点で活着しており、生育も良好であることがわかりました。また「おさかなをはぐくむ湧水と海を守る森」内外の植生を改めて調査し、2022度以降の植樹活動ではさらに現地の植生を生かしながら森づくりを行うこととしました。より自然に近い森を築き、また合理的な森林保全となるよう活動をブラッシュアップしていきます。
2024年10月26日、弓ヶ浜水産、共和水産など中四国地方にあるニッスイグループの事業所や鳥取県関係者から参加者を募り、通算第7回目となる保全活動を行いました。「みどりの少年団(注)交流集会」も同日に開催され、参加した小学生6名に対してニッスイグループの事業紹介や「森・川・海」に関するレクチャーを行いました。 当日は総勢66名の参加となり、約45分間下草刈りで汗を流しました。
(注)みどりの少年団:公益社団法人鳥取県緑化推進委員会が主催。次代を担う子どもたちが、緑と親しみ、緑を愛し、緑を守り育てる活動を通じて、ふるさとを愛し、そして人を愛する心豊かな人間に育っていくことを目的とした団体。
2023年10月2日、兵庫県、姫路市、公益社団法人兵庫県緑化推進協会とニッスイの4者で、「企業の森づくり活動への取り組みに関する協定」を締結しました。この協定に基づいて、活動主体となるニッスイの姫路総合工場が森林保全活動に参画し、水源の涵養や地球温暖化防止などの森林の公益的機能の増進を図る取り組みを行っています。
同工場は、工場使用水を取水している市川の流域にある「こうでら健康の森」を活動地域として「ニッスイの森」と命名しました。
水源涵養と地域社会との共生や従業員の環境意識向上を目的とする森林保全活動を2023年11月より開始しました。年2回程度、下草刈りや森林教育イベントを森林ボランティアにレクチャーを受けながら実施しています。
2024年11月16日、3回目となる森林保全活動を実施しました。ニッスイ従業員とその家族、兵庫県および同県姫路市関係者、ひょうご森の倶楽部関係者の総勢41名が参加し、森林保全の意義や作業内容、安全上の注意点などに関する講義を受講したのち、ひょうご森の倶楽部の指導員の指導を受けながら、日光を遮る照葉樹や竹などの伐採を行いました。
宇津貫緑地は、2011年に建設された東京イノベーションセンターに隣接する里山で、ホタルが生息するなど、自然の宝庫でもあります。
2013年からは毎年、「宇津貫みどりの会」の指導のもと、事業所周辺の自然環境保全および地域社会との共生を目的とした活動を行っています。活動内容はその年によって異なりますが、敷地内にあるログハウスで行う「森・川・海」のつながりや里山に生息する植物や動物に関する座学や、里山での下草刈りなどといった野外作業を実施しています。
2024年11月24日、11回目となる活動を実施し、東京イノベーションセンター勤務の従業員やその家族など総勢55名が参加しました。当日は、環境保全に関するレクチャーのほか、3つの班に分かれて宇津貫みどりの会のメンバーから植生などの解説を受けながら緑地の散策をしたのち、保全活動、緑地内の階段の修繕や下草刈りなどを行いました。また、子ども向けプログラムとして木工クラフト制作や丸太切り体験も実施しました。
なお、ニッスイは2015年度より「宇津貫みどりの会」の賛助会員となっています。
集合写真
保全活動の様子
丸太切り体験の様子