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天然水産資源の持続的な利用

リード文

天然水産資源の持続的な利用

世界の水産資源は枯渇化が進んでおり、2022年の国連食糧農業機関(FAO)の報告書によると、世界の海洋水産資源は資源安定状態が7%、満限利用の状態が57%、過剰漁獲状態が36%とされています。水産資源の状態は、海の恵みを受けて事業を営むニッスイグループにとって、中長期的な事業のリスクやチャンスに関わる非常に重要なものであると考えています。
そのため、調達品の資源状況の把握と、対応すべき課題の特定を目的に、ニッスイグループ全体で調達した水産資源状態について調査を行っているほか、グループ全体で持続的な水産資源の利用のための取り組みを推進しています。

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第2回ニッスイグループ取り扱い水産物の資源状態調査(2019年)

ニッスイおよびグループ会社(国内20社、海外20社)が2019年に取引した天然魚の実績をもとに、資源調査を行いました。水産物は原魚換算で約271万トンとなり、世界の天然水産物漁獲量の約2.7%に相当します。

2017年の前回調査からさらに調査方法を深化させ、魚種、漁獲海域、原産国、重量(原魚換算)に加えて漁法や漁具も調査しました。また、第1回調査では対象としなかった魚油・配合飼料原料を今回の調査対象に加えました。調査データの分析はSFP(注)(Sustainable Fisheries Partnership)へ委託し、第三者性を確保しました。

(注)SFP:持続可能な漁業のためのパートナーシップ、サプライチェーンで漁業改善を推進する米国NGO。

資源調査の方法と結果

実施年 第1回(2017) 第2回(2020)
対象年 2016 2019
グループ
(社数)
38社
(ニッスイ、国内21、海外16)
41社
(ニッスイ、 国内20、海外20)
調査
対象外
海藻および魚油、配合飼料[魚粉] 海藻
分析・評価 自社 第三者委託(SFP)
資源データ
評価法
FAO (注1) Fisheries and Aquaculture Technical Paper No.569. Rome, FAO. 2011.
SFP Fish Source(注2)(Score4)
SFP Fish Source (Score1-5)による総合評価
⇒ ODP(Ocean Disclosure Project)(注3)で 採用の評価手法

(注1)FAO:Food and Agriculture Organization of the United Nations(国連食糧農業機関)。
(注2)FishSource:SFPが2007年に開設した国際的な資源評価データベース。各国行政機関の水産資源情報等をもとに開発された。
(注3)ODP:SFPが2015年に設立したシーフードの調達を自主的に開示するためのオンライン報告プラットフォーム。

【図版】資源調査の方法と結果

調査の結果、ニッスイグループの調達エリアと数量は上図の通り、日本が一番多く約81万トン、次いで南米、北米となることがわかりました。

魚種カテゴリー別 取扱重量 (FAO-ISSCAAP分類による魚種群)

【図版】魚種カテゴリー別 取り扱い重量 (FAO-ISSCAAP分類による魚種群)

取り扱い魚種は、魚粉や魚油の原料として使用されているニシン・イワシ類が最も多く、次いでタラ・メルルーサなどの白身魚類、サバ・アジ・ブリなどの浮魚類と続きます。上位2つのカテゴリーで全体の約68%を占めることが判明しました。

資源管理状態の評価結果

今回の調査結果は第三者である外部機関(Sustainable Fisheries Partnership)に送り資源状態の評価を行いました。
同機関が管理する国際的な資源評価データベース「FishSource」(注)では資源状態、漁業管理体制など下記5項目をおのおの10点満点でスコア化しており、この評点をもとにODP(Ocean Disclosure Project)が定める方法により4段階で資源管理状態を判定しました。

(注)FishSource:各国行政機関の水産資源情報等をもとに開発された国際的な資源評価データベース。

●FishSource 5つのスコア

スコア1:管理戦略の予防原則に対する準拠性
スコア2:管理者の科学的根拠に対する準拠性
スコア3:漁業者のコンプライアンス
スコア4:現在における資源の健全性
スコア5:将来における資源の健全性

2019年調達品の資源管理状態

【図版】2019年調達品の資源管理状態

ODPによる評価手法(FishSourceスコア1~5による判定)

  • Well Managed(優れた管理):
    すべてのスコアが8以上
  • Managed(管理):
    すべてのスコアが6以上
  • Needs improvement(要改善):
    0以上6未満のスコアが1つ以上ある
  • Not Scored(スコア欠損):
    スコアに1つ以上の欠損がある

SFPによる分析の結果、調達品の約71%が「優れた資源管理」もしくは「資源管理されている」状態であることがわかりました。一方で要改善状態の資源が8%、スコアが欠損しており判定できない資源が21%ありました。

持続可能な水産物利用を推進する第三者プログラム

調達総量に占める比率

【図版】調達総量に占める比率
  • MSC :
    イギリスに本部を置くMSC(海洋管理協議会)が運営する水産エコラベル認証制度。現在、329漁業が認証取得。CoC認証を取得した企業は4,095社。
  • Alaska RFM :
    アラスカの責任ある漁業管理(RFM)プログラム
  • Friend of the Sea :
    イタリアに本部を置く環境NGOが運営する水産工コラベル認証制度。83漁業が認証取得し、CoC認証を取得した企業は481社。
  • IFFO RS :
    主に魚粉および魚油業界の生産者を対象とした、責任ある製造と原材料の調達を保証する工場認証規格。現在は、Marin trust認証。
  • FIP :
    漁業者、企業、流通、NGOなど関係者が協力し、 漁業の持続可能性の向上に取り組む漁業改善プロジェクト。

また、エコラベル等の持続可能な水産物利用を推進する第三者プログラム由来の調達は、全漁獲量の約51%にのぼりました。MSC認証品の約77万トンのうち、スケソウダラが約72万トンと9割以上を占めています。

課題魚種の設定について

ニッスイグループは、調達水産物のうち以下の2点「①絶滅危惧種」「②Not Scoredの魚種」を特に課題と考え、取扱重量の多い魚種から優先的に今後の取り組みについて議論を進めています。

① 絶滅危惧種

調査の結果、取り扱う水産物の一部に、IUCN(国際自然保護連合)で定められた絶滅危惧種Ⅰ類(IUCNレッドリストにおけるCR, EN)に該当する魚種が含まれていることが判明しました。

絶滅危惧種への対応策

2022年、「ニッスイグループ絶滅危惧種(水産物)の調達方針」を策定するとともに、当方針に従い、特に絶滅危険度が高い魚種への対応策を決定しました。この対応策については、水産資源の保全に関わる第三者(NGO、大学などの研究機関)と意見交換を行い、妥当性の確認をしていただきました。

2021年9月調査結果公表時の分類に基づく絶滅危惧種

分類 魚種(英) 学名 和名 重量(トン)
CR
0.8トン
european eel Anguilla anguilla ヨーロッパウナギ 0.8
EN
316トン
southern bluefin tuna Thunnus maccoyii ミナミマグロ 157
winter skate Leucoraja ocellata ガンギエイ 116
sea cucumber Apostichopus japonicus Isurus ナマコ 22
shortfin mako Isurus oxyrinchus アオザメ 8
atlantic halibut Hippoglossus hippoglossus タイセイヨウオヒョウ 6
japanese eel Anguilla japonica ニホンウナギ 6

【図版】矢印(下へ)

2022年時点の分類に基づく絶滅危惧種と、ニッスイグループの対応策(IUCNの絶滅危惧種の分類は変化することがあります)

分類 魚種(英) 学名 和名 重量
(トン)
ニッスイグループの現在の対応策
CR
51.8トン
spiny dogfish Squalus suckleyi アブラツノザメ 51 調達品に占めるMSC品比率は50%。今後、比率向上に努める。
european eel Anguilla anguilla ヨーロッパウナギ 0.8 販売先の拡大を停止している。
EN
307トン
southern bluefin tuna Thunnus maccoyii ミナミマグロ 157 適切にRFMO(地域漁業管理機関)が管理しているため、今後も管理枠内での調達が可能と判断。
winter skate Leucoraja ocellata ガンギエイ 116 販売先の拡大を停止している。
sea cucumber Apostichopus japonicus Isurus ナマコ 22 新たに水産流通適正化法(日本)による管理が開始されているため、今後も管理枠内での調達が可能と判断。
atlantic halibut Hippoglossus hippoglossus タイセイヨウオヒョウ 6 取り扱い実績のあるニッスイグループの3社のうち2社で取り扱いを停止した。残る1社も取扱量を減少させている。
japanese eel Anguilla japonica ニホンウナギ 6 ニッスイグループ中1社のみ取り扱いがある。水産流通適正化法の対象魚種に今後、ウナギの稚魚(シラス)が加わる予定であり、その動向を踏まえて、対応策を検討する。

② Not Scoredの魚種

配合飼料の原料となる魚種の多くがこのカテゴリーに含まれることが分かっています。サプライヤー・ラウンドテーブルへの参画など、社外とも協力してトレーサビリティを高めるように努めてまいります。その他の不明魚種についても資源状況や各漁業国のIUU(違法・無報告・無規制)漁業対策を注視し、各国に科学的な資源管理を行うようSeaBOSを通じた提言を行うなどの対応をしていきます。

継続した調査の実施

ニッスイでは、グループ全体による水産物調達が、環境に与える影響を把握するため水産物の資源状態調査を実施しています。 これまでの結果から、現時点では、いくつか課題は有するものの、ニッスイグループの調達は海洋環境や水産資源に対して深刻な影響を与えていないと判断しています。
一方、水産物需要の高まり、気候変動に伴う海水温上昇など水産資源を取り巻く環境は常に変化しています。この先、将来にわたってマーケットの需要に応えるためには、定期的に調査を行い、常に適切な対応策を取ることが重要だと考えています。2023年には、2016年、2019年に続く3回目として、ニッスイグループが2022年の1年間に取り扱った水産物を対象に調査を開始しています。今後、この結果を分析し対応策を講じることで、持続可能な水産物の利用に努めます。

第1回水産資源調査の結果はこちら(1.04MB)

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ラウンドテーブルへの参画

Global Roundtable on Marine Ingredientsに参画

2022年より、持続可能な水産物の普及に向けて取り組むラウンドテーブルである「Global Roundtable on Marine Ingredients」に参画しています。これは、第2回ニッスイグループ取り扱い水産物の資源状態調査(2019年)の結果で、資源状態の把握が困難な「Not Scored」、あるいは資源状態の改善が必要な「Needs Improvement」と判定された魚種への対応のひとつとなります。今後、このラウンドテーブルの活動を通じて具体的な対策の検討を進めます。

外部イニシアティブへの参加​

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WWFジャパン「太平洋クロマグロ保全の誓い」への参画

ニッスイグループは、WWFジャパンの提起による「太平洋クロマグロ保全の誓い」への参画により、これに賛同する複数の日本企業とともに、国際漁業資源である太平洋クロマグロの資源管理に関してさらなる国際合意を進めることを望む意思を表明します。

詳しくはこちら

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RFVS認証

RFVS認証の取得

ニッスイの海外グループ会社であるオーストラリアン・ロングライン社(オーストラリア)は、主に南氷洋でメロ漁業(MSC認証対象)を営んでいます。2021年1月、同社が所有するAntarctic Discovery号が、世界に先駆けて初めてRFVS(Responsible Fishing Vessel Standard)認証を取得しました。RFVS認証は漁船に関する認証で、非営利組織であるGSA(Global Seafood Alliance)によってグローバルの規模で運営されています。漁船の管理や漁獲のトレーサビリティに加えて、船上で働く従業員の安全やウェルビーイングといった人権の観点からも監査がなされます。本認証取得により、同社が船内の乗組員に対して高水準の注意と安全を順守しており、奴隷労働や劣悪な生活環境といった違法な慣行に関与していないことを世間に示すことができました。同社は2021年2月、新船Antarctic Aurora号においてもRFVSを取得しています。

RFVS認証の推奨

同じくニッスイの海外グループ会社であるフラットフィッシュ社(英国)は、2019-2020年に認証の技術ワーキンググループの一員として、認証の査読などを通し、このRFVSに貢献しました。フラットフィッシュ社はこの認証スキームに対して、2006年の立ち上げ当初だけでなく、その後2016年に再開された際にも賛同し、実現に向けて継続的な支援を行いました。また、「船舶の管理と安全システム」「乗組員の権利、安全、福利厚生」といった二つの柱からなる、RFVSの漁船の乗組員の福祉に関する基準を非常に重要であると考え、自社のサプライチェーン全体で当認証を採用することを推奨しています。

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海鳥/海獣類の混獲防止

漁業では、本来目的とする魚ではない、海鳥や海獣類の偶発的な捕獲が課題視されています。ニッスイグループでは、それぞれの漁法における混獲のリスクを理解するとともに、防止のための取り組みを進めます。また、SeaBOS(Seafood Business for Ocean Stewardship、持続的な水産ビジネスを目指すイニシアティブ)でも当テーマを扱っており、他のメンバー企業とともに現状の把握と改善に努めます。

グループ会社の取り組み

ニッスイグループの漁業会社では、海鳥の混獲防止のために広く使用されているトリライン(注)を導入している他、漁法に合ったさまざまな工夫を行っています。また、国や漁業海域で混獲防止に関する制度がある場合は、それらに従い事業を行っています。

(注)トリライン:漁船の船尾に取り付けた長い棒の先から吹き流しやテープを付けたロープを曳航(えいこう)し、鳥が餌に近づけないようにする仕掛け。トリポールともいう(出典:WWFウェブサイト)。

【エムデペス社の取り組み】

チリでトロール漁業を行うエムデペス社は、海鳥が、船尾から海中にのびるワイヤーに衝突することを防止する為、滑車付き錘(おもり)をつるし、当該ワイヤーを船尾直近に水没させる工夫を行いました。これにより海鳥の空中でのワイヤー衝突に関しては、従来と比較して約80%削減することができています。この取り組みは、チリの漁業省へ報告を行い、良案との評価を得ました。また、エムデペス社の漁船は、海獣類(オットセイ、アザラシ等)の混獲防止装置も装着しており、この効果により海獣類の混獲はゼロとなっています。

【写真】WESMARセンサー用ワイヤーと錘

漁具監視センサー用ワイヤーと錘

【図版】漁具監視センサー用ワイヤーと錘

【シーロード社の取り組み】

ニュージーランド・オーストラリアでトロール漁業を行うシーロード社は、Southern Seabird Solutions Trust (注)の創設メンバーであり、海鳥の混獲防止に取り組んだ漁業者への表彰制度である「Seabird Smart Awards」を支援しています。シーロード社自身も2010年にF.V. Thomas Harrison号にて、Seabird Safe Awards 2010を受賞しています。海鳥の偶発的捕獲を防止するために以下のようなさまざまな対応策を実施しています。

  • バフラー (金属製のかかしのようなもの) とトリライン (ストリーマー) を使用して、海鳥を怖がらせてラインやトロール網から遠ざける。
  • 海鳥が少ない夜のトロール。
  • 海鳥を引き寄せる原因となる魚の内臓等の加工残渣を船上で管理する。
  • すべての船について混獲削減管理の計画を立てる。

(注)Southern Seabird Solutions Trust:WWF、漁業者、政府の革新的な同盟。南洋船団の漁業者が責任ある漁業慣行を採用することを支援および奨励し、漁業によるニュージーランドの海鳥への害を減らすために、南半球の漁業において、漁業が海鳥に及ぼす影響の軽減に貢献するプロジェクトを提供している。

【写真】海鳥

海鳥

【写真】バッフル

バフラー

【図】トリライン

トリライン

【オーストラリアン・ロングライン社の取り組み】

オーストラリアで底延縄漁業を行うオーストラリアン・ロングライン社では、船内にムーンプールという装置を導入しています。ムーンプールとは、船底に開けられた円形の穴のことです。延縄漁船で、ムーンプールからラインを巻き上げることにより、甲板での作業の場合と比較し、野鳥を巻き込むリスクが低下します。また船員の安全確保にもつながります。

【写真】オーストラリアン・ロングライン社漁船のムーンプール

ムーンプール

SeaBOSにおける取り組み

ニッスイも含め、SeaBOSのメンバー企業は、事業を行ううえで絶滅危惧種への影響を減らす方針に関して合意しています。絶滅危惧種への対応をテーマとするタスクフォースでは、漁業/養殖業で、まずサメ、エイ類、海鳥から、絶滅危惧種の混獲防止の取り組みを進めることを決定しています。

SeaBOSへの賛同

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ニューイングランド水族館とのパートナーシップ

ニッスイの海外グループ会社であるゴートンズ社(米国)は、ニューイングランド水族館(米国マサチューセッツ州ボストン、以下NEAq)と海洋保護、持続可能な水産資源の確保ためパートナーシップを結んでいます。ゴートンズ社が2008年に自社のシーフード製品についての科学的な持続可能性評価をNEAqに依頼したことに始まり、このパートナーシップは2022年12月で14年を迎えました。

【写真】NEAq

NEAqはモントレーベイ水族館とならび、世界的な水産資源研究の知見を有しており、 漁業や養殖事業の動向、飼料、品種改良など、持続可能な漁業の取り組みを進めるうえで科学的で有意義なアドバイスやサポートを提供してくれています。
また、ゴートンズ社ではSustainability Action Plan (持続可能性に向けた行動計画)を策定し 、KPIを設定して進捗管理を行っており、NEAqとの意見交換を行いながら計画を進めています。

これまで築いてきたNEAqとの強い信頼をもとに、これからもゴートンズ社は資源の持続的な利用、海洋環境の保全に積極的に取り組みます。

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新たな漁法(PSH)の開発(シーロード社)

水産資源の持続可能性を高めるためには、漁業の方法(漁法)にも工夫が必要になってきます。海の環境を悪化させてしまうような漁法や、目的とする魚以外の生物を獲ってしまう混獲の問題が指摘されており、海の生態系を守り環境を悪化させないためにも、より生物や環境にダメージの少ない漁法を開発する必要があります。

ニッスイの海外グループ会社であるシーロード社(ニュージーランド)は、国内の大手水産会社であるAotearoa Fisheries社およびSanford社、そして農業および水産業の持続可能性を研究するPlant & Food Research社とパートナーシップを組み、混獲を減らし、本来目的とする魚を生きたまま捕獲できる「PSH漁法システム」を開発することに成功しました。
PSH漁法システムでは、柔軟なポリ塩化ビニール製で海水が流入すると筒状に広がる漁具を使用するため、魚が泳いでいる状態で生きたまま水揚げすることが可能です。小型魚種やサイズの小さい魚は、漁具の特定のサイズの穴を通って逃げることができます。

【写真】PSH漁法システム

科学的試験では、PSH漁法で捕獲した鯛は水深20メートル以内での生存率が100%であるという結果が出ています。水深が深くなるにつれ生存率は下がる傾向にありますが、PSH漁法では一般的な漁法よりも高い生存率で魚を捕獲できることが明らかになりました。
このことから、深海生物の研究や、水深の深い場所に生息する海洋生物の捕獲にもPSH漁法は有効と考えられています。

前述の4社は、2005年のプロジェクト立ち上げからおおよそ10年もの間、調査研究などの試行錯誤を繰り返し、2016年ついにPSH漁法の商業化(実用化)を実現させました。シーロード社は現在、PSH漁業を広め、持続可能な漁業の普及に寄与すべく取り組みを行っています。

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