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天然水産資源の持続的な利用

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天然水産資源の持続的な利用

世界の水産資源は枯渇化が進んでおり、2018年の国連食糧農業機関(FAO)の報告書によると、世界の海洋水産資源は資源安定状態が7%、満限利用の状態が60%、過剰漁獲状態が33%とされています。水産資源の状態は、海の恵みを受けて事業を営むニッスイグループにとって、中長期的な事業のリスクやチャンスに関わる非常に重要なものであると考えています。
そのため、調達品の資源状況の把握と、対応すべき課題の特定を目的に、ニッスイグループ全体で調達した水産資源状態について調査を行っているほか、グループ全体で持続的な水産資源の利用のための取り組みを推進しています。

system, 日本水産株式会社 CSR部CSR課, 外部協力者, 日本水産株式会社 広報課, 日本水産株式会社 人事部人事課

第1回ニッスイグループ取扱水産物の資源状態調査(2016年)

グループ会社(国内28社、海外16社)における2016年の天然魚の取引実績をもとに、資源調査を行いました。ニッスイグループが調達している天然水産物は原魚換算で約150万トンとなり、世界の天然水産産物漁獲量の1.6%に相当します。

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資源調査のプロセスと結果

魚種、漁獲海域、原産国、重量(原魚換算)を手掛かりに、4つのSTEPで調達した天然水産物の資源状況を分析しました。

【図版】天然水産物の資源状況

STEP1~STEP3の結果、調達品の88%が「心配ない」資源状態であり、うち37%は水産エコラベルの認証品であることが分かりました。
一方で、12%の魚種および絶滅危惧種は資源状態が「心配ある」「不明」に分類されました。これらの魚種に対しては、STEP4で再調査を行い、国や地域漁業管理機関の資源回復計画の有無、網目規制や操業期間の制限の有無、漁業管理の有無を確認しました。

「心配ある・不明」の漁業管理の確認結果

STEP4の再調査の結果、配合飼料を中心として「漁業管理の有無が不明な魚種」が8.8%存在することが判明しました。これらの魚種については、配合飼料メーカーと協力してトレーサビリティを高めるように努めてまいります。その他の不明魚種については引き続き資源状況や各漁業国のIUU漁業対策を注視し、各国に科学的な資源管理を行うようSeaBOSを通じた提言を行うなどの対応をしていきます。

【天然魚の資源状態】矢印

「絶滅危惧種Ⅰ類」の取り扱い

「心配ある」に分類された魚種には、IUCN(国際自然保護連合)のカテゴリーCR(CriticallyEndangered、WWF呼称「近絶滅種」、環境省呼称「絶滅危惧種ⅠA類)およびEN(Endangered、WWF呼称「絶滅危惧種」、環境省呼称「絶滅危惧IB類」)の魚種が含まれています。これらの魚種については、それぞれの資源状況を注視しながら、以下のような対応をしていきます。

取扱会社 RedList評価 魚種(学名) 重量 評価 備考
Japan CR 南まぐろ (Thunnus maccoyii) 114 心配ある 資源回復計画あり
EN なまこ (Apostichopus japonicus 20 心配ある 資源管理あり
Denmark CR EEL (Anguilla anguilla 0.4 心配ある オランダESF養殖
EN HALIBUTWHITE (Hippoglossus hippoglossus 9 心配ある 取り扱い見直し
EN SKATE (Leucoraja ocellata 115 心配ある 北米東海岸の規制に基づいた漁獲

【図版】矢印

日本における対応

①南まぐろ:
南まぐろ保存管理委員会が科学的調査に基づき、総漁獲量(TAC)及び締約国ごとの割り当て量を設定している。輸入に当たっては水産庁の指導を遵守しており、取り扱いを継続する。

②なまこ:
各県の資源管理の対象であり、休漁日設定、サイズ制限、種苗放流、漁場造成等の管理措置がとられているため現状程度の取扱いを継続。但し、資源枯渇が懸念される状況になれば、取扱いを漸次削減・中止する。

デンマークにおける対応

絶滅危惧種Ⅰ類は取扱わない。但し、お客様からの要望があった場合、保護・管理を確認し継続する

【ロゴ】>ESF

継続した調査の実施

ニッスイグループは、管理されていないことが明らかな資源や不明な状態が継続する資源、さらにIUU(違法・無報告・無規制)漁業や強制労働が疑われる資源は取り扱いません。今後も定期的に水産資源調査を実施することで、常に変化する水産物の資源状態を把握していきます。そして、将来にわたってマーケットの需要に応えられるよう、持続可能な水産物の利用に努めます。
現在、第2回調査として2019年1月~12月を対象に、資源状態の調査および分析を行っています。

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WWFジャパン「太平洋クロマグロ保全の誓い」への参画

ニッスイグループは、WWFジャパンの提起による「太平洋クロマグロ保全の誓い」への参画により、これに賛同する複数の日本企業とともに、国際漁業資源である太平洋クロマグロの資源管理に関してさらなる国際合意を進めることを望む意思を表明します。

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RFVS認証の取得

ニッスイの海外グループ会社であるオーストラリアン・ロングライン社(オーストラリア)は、主に南氷洋でメロ漁業(MSC認証対象)を営んでいます。
2021年1月、同社が所有するAntarctic Discovery号が、世界に先駆けて初めてRFVS(Responsible Fishing Vessel Standard)認証を取得しました。RFVS認証は漁船に関する認証で、非営利組織であるGSA(Global Seafood Assurances)によってグローバルの規模で運営されています。漁船の管理や漁獲のトレーサビリティに加えて、船上で働く従業員の安全やウェルビーイングといった人権の観点からも監査がなされます。本認証取得により、同社が船内の乗組員に対して高水準の注意と安全を順守しており、奴隷労働や劣悪な生活環境といった違法な慣行に関与していないことを世間に示すことができました。
また、同じくニッスイの海外グループ会社であるフラットフィッシュ社(英国)は、2019/2020年に認証の技術ワーキンググループの一員として、認証の査読などを通し、このRFVSに貢献しました。フラットフィッシュ社はこの認証スキームに対して、2006年の立ち上げ当初だけでなく、その後2016年に再開された際にも賛同し、実現に向けて継続的な支援を行いました。

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海鳥の偶発的捕獲防止のための取り組み

漁業において、本来目的とする魚ではない、海鳥の偶発的な捕獲が課題視されています。漁業を行うニッスイのグループ会社では、トリライン(注1)やムーンプール(注2)を導入し、海鳥の混獲防止に努めています。

(注1)トリライン:漁船の船尾に取り付けた長い棒の先から吹き流しやテープを付けたロープを曳航(えいこう)し、鳥が餌に近づけないようにする仕掛け。トリポールともいう(出典:WWFウェブサイト)。
(注2)ムーンプール:船底に開けられた円形の穴。延縄漁船において、そこからラインを巻き上げることで、甲板での作業の場合と比較し、野鳥を巻き込むリスクが低下する。また船員の安全確保にもつながる。

【写真】オーストラリアン・ロングライン社漁船のムーンプール

オーストラリアン・ロングライン社漁船のムーンプール

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ニューイングランド水族館とのパートナーシップ

ニッスイの海外グループ会社であるゴートンズ社(米国)は、ニューイングランド水族館(米国マサチューセッツ州ボストン、以下NEAq)と海洋保護、持続可能な水産資源の確保ためパートナーシップを結んでいます。ゴートンズ社が2008年に自社のシーフード製品についての科学的な持続可能性評価をNEAqに依頼したことに始まり、このパートナーシップは2020年12月で12年を迎えました。

【写真】NEAq

NEAqはモントレーベイ水族館とならび、世界的な水産資源研究の知見を有しており、 漁業や養殖事業の動向、飼料、品種改良など、持続可能な漁業の取組みを進めるうえで科学的で有意義なアドバイスやサポートを提供してくれています。
また、ゴートンズ社ではSustainability Action Plan (持続可能性に向けた行動計画)を策定し 、KPIを設定して進捗管理を行っており、NEAqとの意見交換を行いながら計画を進めています。

これまで築いてきたNEAqとの強い信頼をもとに、これからもゴートンズ社は資源の持続的な利用、海洋環境の保全に積極的に取り組みます。

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新たな漁法(PSH)の開発(シーロード社)

水産資源の持続可能性を高めるためには、漁業の方法(漁法)にも工夫が必要になってきます。海の環境を悪化させてしまうような漁法や、目的とする魚以外の生物を獲ってしまう混獲の問題が指摘されており、海の生態系を守り環境を悪化させないためにも、より生物や環境にダメージの少ない漁法を開発する必要があります。

ニッスイの海外グループ会社であるシーロード社(ニュージーランド)は、国内の大手水産会社であるAotearoa Fisheries社およびSanford社、そして農業及び水産業の持続可能性を研究するPlant & Food Research社とパートナーシップを組み、混獲を減らし、本来目的とする魚を生きたまま捕獲できる「PSH漁法システム」を開発することに成功しました。
PSH漁法システムでは、柔軟なポリ塩化ビニール製で海水が流入すると筒状に広がる漁具を使用するため、魚が泳いでいる状態で生きたまま水揚げすることが可能です。小型魚種やサイズの小さい魚は、漁具の特定のサイズの穴を通って逃げることができます。

【写真】PSH漁法システム

科学的試験では、PSH漁法で捕獲した鯛は水深20メートル以内での生存率が100%であるという結果が出ています。水深が深くなるにつれ生存率は下がる傾向にありますが、PSH漁法では一般的な漁法よりも高い生存率で魚を捕獲できることが明らかになりました。
このことから、深海生物の研究や、水深の深い場所に生息する海洋生物の捕獲にもPSH漁法は有効と考えられています。

前述の4社は、2005年のプロジェクト立ち上げからおおよそ10年もの間、調査研究などの試行錯誤を繰り返し、2016年ついにPSH漁法の商業化(実用化)を実現させました。シーロード社は現在、PSH漁業を広め、持続可能な漁業の普及に寄与すべく取り組みを行っています。

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