Environment 環境

養殖の推進

世界規模で水産物の消費量は拡大しており、今後も需要増加が見込まれます。ニッスイは、安全・安心でおいしい魚をお届けするため、国内外で養殖事業に力を注いでおり、海外ではサケ・マス、国内では、ブリ、カンパチ、マグロ、ギンザケ、サバなどの養殖事業を展開しています。
食品メーカーとして「食べ物のおいしさ」にもこだわり、それを起点として、養殖魚を生み出す、種苗、飼料、養殖、加工、流通の全ての段階でさまざまな研究、技術開発を進めています。 また、量販店や中食・外食など顧客別の担当が把握したお客さまニーズを関連部署にフィードバックすることで、ご要望にお応えした技術を開発しています。
また、中央研究所 大分海洋研究センターでは水産資源の持続可能性につながる養殖に特化した研究開発を進めています。

ニッスイグループ養殖関連事業所・養殖マップ

【図版】ニッスイグループ養殖関連事業所・養殖マップ

system, 株式会社ニッスイ サステナビリティ推進部, 外部協力者, 株式会社ニッスイ コーポレートコミュニケーション部

養殖魚の健康に関する研究と管理の体制

研究拠点 – 中央研究所 大分海洋研究センター

養殖魚の安定育成を脅かす問題を研究し、ニッスイグループの養殖事業に貢献しています。

【中央研究所 大分海洋研究センターの取り組みテーマの例】

  • 養殖魚の健康管理
  • 抗菌剤に頼らない養殖方法の研究開発

ニッスイグループ独自の養殖魚健康管理 - N-AHMS

ニッスイグループでは、日本国内の養殖魚の健康を管理する体制「N-AHMS(NISSUI Aquaculture health management system)」を構築しています。N-AHMSでは、養殖魚の健康診断の精度と信頼性向上のため、養殖魚の健康診断を担うA級検査員や指導者などの社内認定制度を設け、検査の質の標準化を進めています。

ニッスイグループ独自の養殖魚健康管理 - N-AHMS

養殖魚の健康診断に関して社内認定を受けた人数
  2020年度 2021年度 2022年度
指導者(注1) 12 11 1
A級検査員(注2) 21 25 8
準A級検査員(注3) - - 3

各年度3月末時点
対象範囲:ニッスイグループの国内のすべての連結子会社(養殖会社のみ)。

(注1)指導者:見習い検査員をA級検査員に育成できる。
(注2)A級検査員:漁場で育成している養殖魚の健康診断を実施し、正しい結果を導ける。
(注3)準A級検査員:漁場で育成している養殖魚の健康診断(所見・顕微鏡観察に限定)を実施し、正しい結果を導ける。

獣医師との協働

ニッスイグループでは獣医師と契約し、検査員の健康診断結果を基に診療、水産用医薬品使用管理および防疫・健康管理指導を行っていただいています。

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海洋環境への負荷低減

逃亡魚

【逃亡魚防止についての考え方】

養殖場からの逃亡魚が生態系に与える可能性のあるリスクを理解するとともに、逃亡魚の発生ゼロを目指します。そのための取り組みとして下記を実施します。

  1. 1. 設備の点検
    普段の業務において設備点検を実施する。台風の影響を受けやすい養殖場では、台風発生前後の設備点検を実施する
  2. 2. 逃亡魚の把握
    逃亡魚が発生した際は、発生規模を問わず、全て把握、記帳、集計する
  3. 3. 原因分析と再発防止
    逃亡魚が発生した際は、その原因分析と再発防止策を検討し、発生都度、書面にてその内容を残す
  4. 4. 従業員への教育
    従業員に対し、逃亡魚の防止に向けた教育機会を設ける(1回/年以上)
逃亡魚の発生数
地域/国 魚種 2020年 2021年 2022年
発生件数 尾数 発生件数 尾数 発生件数 尾数 原因 再発防止策
日本 ブリ 0 0 1 198 2 39 作業ミス 養殖魚の薬浴時の作業フロー改善
カンパチ 0 0 1 10 0 0 - -
クロマグロ 2 13,593 0 0 1 740 自然災害 高形状保持機能/超高剛性生け簀網の導入
ギンザケ 1 20,983 1 28,628 0 0 - -
チリ トラウト 0 0 0 0 0 0 - -
合計   3 34,576 3 28,836 3 779 - -

対象範囲:ニッスイグループの国内・海外のすべての連結子会社(養殖会社のみ)。

逃亡魚の発生防止に関する従業員への教育
地域/国 2022年
実施社数 内容の例
日本 7/7社 勉強会「養殖魚の逃亡防止の取り組みについて」
チリ 1/1社

対象範囲:ニッスイグループの国内・海外のすべての連結子会社(養殖会社のみ)。

飼料・給餌における海洋環境への負荷低減

一般的な養殖の給餌方法では、食べ残された餌が養殖場やその周辺の水質を悪化させてしまうことがあります。そのため給餌の際に海中に散逸しにくく、消化性の優れた配合飼料「EP飼料」や、魚の食欲に応じて適量の餌を与える自動給餌制御システム「アクアリンガル®」など、海洋環境への負荷を低減し、生態系への影響を抑える養殖技術の開発を推進しています。

【写真】EP飼料

EP飼料

【写真】岩手県大槌町の「アクアリンガル®」給餌システム

岩手県大槌町の「アクアリンガル®」給餌システム

魚のミンチや粉末飼料に比べてEP飼料のメリットは

  • 水を汚しにくい。
  • 栄養分がバランスよく摂取できる。
  • 消化しやすい。
  • 自動給餌に適している。 
海洋環境への負荷を抑えた陸上養殖の試み
魚種 地域/国 内容
バナメイエビ 日本(鹿児島県) 「閉鎖式バイオフロック法」による陸上養殖の研究(フィージビリティスタディ)を実施。飼育水の量を必要最低限に抑制し、飼育水槽内の微生物集合体(バイオフロック)に水を処理させる。
マサバ 日本(鳥取県) ニッスイグループと日立造船株式会社との共同で、マサバ循環式陸上養殖を技術開発。地下海水の利用と循環水処理システムにより、水温・水質を最適な環境にコントロール。外海の海水を使用せず、アニサキスなどの寄生虫のリスク低減。
アトランティック・サーモン デンマーク 2020年4月、ニッスイヨーロッパ社は、丸紅株式会社とともに、デンマークでサケの閉鎖循環式養殖事業を営むダニッシュ・サーモン社(Danish Salmon A/S)へ資本参加。2023年に増設工事が完了、現行の水揚げ量1,000トンから2,700トンに引き上げ予定。

海洋プラスチック対策

海洋プラスチック

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養殖魚の健康とウェルフェアの向上

魚病の管理

【ハダムシ】

ブリ類などの海面養殖で問題となる疾病のひとつに魚の体表に寄生するハダムシが挙げられます。大分海洋研究センターではハダムシの駆虫方法として、養殖魚への安全性と環境に配慮した低濃度過酸化水素水薬浴法(常用濃度の1/3)を動物用医薬品会社と共同で開発し、実用化しました。

【Sea lice(カリグス)】

Sea liceのまん延は、世界中のサーモン養殖産業の大多数にとって大きな課題です。ニッスイグループ会社のサルモネス・アンタルティカ社(以下S.A.社)が養殖事業を行うチリでは、養殖場を媒介としたSea lice(カリグス、海シラミ)の感染拡大を防止するため、国立水産養殖局により全国的な監視および管理プログラムが実施されています。
S.A.社では、国の管理プログラムに参加し、Sea lice対策を行っています。加えて、今後のさらなるSea lice対策の改善に向けた戦略として、

  • 天然由来成分の薬効の評価
  • チリの大学と共同での代替技術の研究開発

に取り組んでいます。

養殖魚のウェルフェアとしての締めと事前の気絶

ニッスイグループの養殖では、全魚種の総水揚げ量(t)の100%で、魚へのストレスが少ない短時間での締めを行っています。また、総水揚げ量(t)の98%で、事前の気絶(注)の実施ができているか、または作業手順の改善を検討し気絶の実施を推進しています。サーモン養殖では、水揚げ量(t)の100%で締め前の気絶を実施しています。ニッスイグループで実施している気絶の手法は主に通電となります。

(注)事前の気絶:魚を締める際、ストレスを与えないよう、事前に意識を失わせ、感覚を麻痺させること。

AI・IoT技術を活用したウェルフェア

ニッスイグループは、電気機器メーカーと協力し、それらの企業が持つ先進のAI・IoT技術を活用して、養殖魚の体長などの測定を自動化するソリューションを共同開発するとともに、養殖現場で活用しています。養殖では、魚の成長状態を常に管理することが求められ、一般的には、適切な給餌量や漁獲高を推定するために魚の体長・体重測定を直接網で掬い上げて測定したり、生け簀内で撮影した画像をコマ送りして測定したりするなどの作業を行っています。しかし共同開発した、このソリューションは、生け簀内の養殖魚を水中で撮影した映像をアップロードするだけで、魚の大きさや体重を算出してレポートします。このソリューションを活用することで、人が魚に触れずに済むため、魚のストレスや病気のリスクを回避できます。また、これまで費やしていた手間や時間を軽減し、測定精度も向上するなど、生産性向上が実現します。AI・IoTの活用範囲を拡げていくことで、安全で安心、おいしい養殖魚の提供を実現してまいります。

  導入社数
魚体測定システム 5/5社

2023年10月現在
対象範囲:ニッスイ国内グループのすべての連結子会社(養殖会社のみ)

【写真】AIによるブリの魚体検知画面

AIによるブリの魚体検知画面

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薬剤の使用

薬剤の使用についての考え方

抗菌剤を使用する際には、魚病の診断を経て、しかるべき薬剤をVET(獣医師)/専門家の監修のもと投与します。

SeaBOSを通した抗菌剤の使用見直しの取り組み

SeaBOS(Seafood Business for Ocean Stewardship、持続的な水産ビジネスを目指すイニシアティブ)のメンバーとして養殖における抗菌剤使用の削減に取り組んでいます。

SeaBOSへの賛同

サーモン養殖における抗菌剤の使用量

魚種 地域/国 抗菌剤(g)/水揚げ量(t)
2020年 2021年 2022年
ギンザケ 日本 0 0 0
チリ 53 8 23
合計 53 8 23
トラウト チリ 565 306 344
合計 565 306 344
総計 439 229 307

対象範囲:ニッスイグループ国内・海外の連結子会社のうちのサーモン類養殖(養殖全体の水揚げ重量のうちの66%を占める(2022年))。

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