Environment 環境

養殖の推進

世界規模で水産物の消費量は拡大しており、今後も需要増加が見込まれます。ニッスイは、安全・安心でおいしい魚をお届けするため、国内外で養殖事業に力を注いでおり、海外ではサケ・マス、国内では、ブリ、マグロ、ギンザケ、サバ、フグなどの養殖事業を展開しています。
食品メーカーとして「食べ物のおいしさ」にもこだわり、それを起点として、養殖魚を生み出す、種苗、飼料、養殖、加工、流通の全ての段階でさまざまな研究、技術開発を進めています。 また、量販店や中食・外食など顧客別の担当が把握したお客さまニーズを関連部署にフィードバックすることで、ご要望にお応えした技術を開発しています。

ニッスイグループ養殖関連事業所・養殖マップ(53拠点:国内34、海外19)

【図版】ニッスイグループ養殖関連事業所・養殖マップ2019

system, 日本水産株式会社 CSR部CSR課, 外部協力者, 日本水産株式会社 広報課

AI・IoT技術の活用

ニッスイは、日本電気(株)と、同社が持つ先進のAI・IoT技術を活用して、養殖魚の体長などの測定を自動化するソリューションを共同開発しました。養殖では、魚の成長状態を常に管理することが求められ、一般的には、適切な給餌量や漁獲高を推定するために魚の体長・体重測定を直接網で掬い上げて測定したり、生簀内で撮影した画像をコマ送りして測定するなどの作業を行っています。しかし今回共同開発したソリューションは、生け簀内の養殖魚を水中で撮影した映像をアップロードするだけで、魚の大きさや体重を算出してレポートします。このソリューションを活用することで、人が魚に触れずに済むため、魚のストレスや病気のリスクを回避できます。また、これまで費やしていた手間や時間を軽減し、測定精度も向上するなど、生産性向上が実現します。ニッスイグループでは今後もAI・IoTの活用範囲を拡げていくことで、安全で安心、おいしい養殖魚の提供を実現してまいります。

【写真】AIによるブリの魚体検知画面

AIによるブリの魚体検知画面

system, 日本水産株式会社 CSR部CSR課, 外部協力者, 日本水産株式会社 広報課

養殖技術のイノベーション

ニッスイグループは、水産資源の持続的利用のために、養殖技術の高度化を進めています。独自技術を投入したブリやギンザケの養殖、完全養殖マグロの生産、バナメイエビの国内陸上養殖の調査研究、困難とされてきたマダコの完全養殖の技術構築など、国内で次々と新たな領域を開拓しています。また、一般的な養殖の給仕方法では食べ残された餌が養殖場やその周辺の水質を悪化させてしまうことがあるため、給餌の際に海中に散逸しない固形配合飼料「EPペレット」、魚が食べたい時にのみ適量の餌を与える自動給餌制御システム「アクアリンガル®」など、水質の悪化を防ぎ、海の生態系への影響を抑える養殖技術の開発も推進しています。

【写真】人工的に生産したマダコの稚魚 EPペレット
【写真】岩手県大槌町の「アクアリンガル」給餌システム

岩手県大槌町の「アクアリンガル®」給餌システム

system, 日本水産株式会社 CSR部CSR課, 外部協力者, 日本水産株式会社 広報課

国産完全養殖本マグロの事業化の取り組み

2018年3月、「喜鮪®(きつな)金ラベル」として初出荷しました。

水揚げする産地近郊での加工により、品質と鮮度、おいしさを重視した、第一級の本マグロを実現しています。国産完全養殖本マグロは、水産資源の持続可能性向上を図る、ニッスイの養殖事業の柱の一つです。

本マグロの養殖におけるコスト要因のひとつとして、孵化後の仔魚の飼料が挙げられます。ニッスイグループでは、ニッスイ中央研究所大分海洋研究センターの研究の成果として、一般的に使用されるイシダイ・キスなどの他魚種の孵化仔魚(餌用仔魚)を配合飼料に置換することに成功、餌用仔魚の孵化のタイミングや飼育管理が不要となり、省人化の足がかりをつけました。
グループ会社の西南水産株式会社で得られた受精卵は、大分海洋研究センターで孵化、上記の独自の配合飼料で育成されます。5~7㎝程度になると、西南水産の中間魚育成の海面漁場で越冬、その後同社の各漁場で出荷サイズまで肥育されます。なお、この漁場間の移送は、本マグロ運搬に特化したグループの専用船で行っています。

各事業所で水揚げされた本マグロは、それぞれ近郊の加工場で裁割・包装してチルド配送でお客様にお届けします。水揚げする産地での加工により、品質と鮮度、おいしさを重視した最適なサプライチェーンを構築しています。
また、給餌方法や、水揚げから裁割、パッケージングに至るまでの工程に独自の工夫を凝らし、通常のマグロに比べてビタミンEに富み、うま味成分のイノシン酸が約2割向上し、色調にすぐれた本マグロをご提供します。
2019年度は、西南水産の甑島事業所、上浦事業所(大分県佐伯市)に加えて、同じくグループ会社である金子産業株式会社の五島事業所でも、完全養殖本マグロの出荷開始を開始しております。

【写真】喜鮪(きつな)金ラベル

ニッスイ国産完全養殖本マグロのブランド「喜鮪®(きつな)金ラベル」

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養殖本マグロの産地加工の取り組み

生鮮の本マグロは水揚げ時の鮮度低下や色沢の劣化が著しく、商品価値が損なわれやすいことが取扱い上の難点となっています。
ニッスイのグループ会社である金子産業株式会社では、養殖本マグロを水揚げ時の高い鮮度を保ったまま加工・包装してチルド配送でお届けする「産地加工」に取組んでいます。さらに同社独自の加工技術により、品質と鮮度、おいしさ、使いやすさを重視した養殖マグロ加工品の最適なサプライチェーンを構築しています。
販売先は、外食・ホテル・量販店などで、加工に人手をかけられない、小ロットで導入したいなど、これまで生鮮マグロの取扱いに躊躇していたお客様のニーズにお応えしています。

同社が2018年5月より販売開始した本マグロ加工品「鮪錦(つなにしき)®」は、同社の長崎県の6つの養殖場で育成した本マグロを、水揚げ後徹底した温度管理のもと唐津の食品工場に搬入、引き続き加工工程でも温度管理を徹底し、特殊フィルムによりサク単位で個包装して、出荷しています。同社は、本マグロの養殖から飼料の生産、加工、保管、流通までの自社一貫体制を整備しており、徹底した鮮度管理・品質管理を可能としていいます。
特に水揚げ以降の温度管理技術は同社が独自に開発したもので、現在、特許出願中です。この技術に、最適な水揚げ方法や魚体の冷却方法を組み合わせて、通常品が加工日から3日程度の消費期限のところ、同品はチルド保管で加工日の翌日から7日間と長く、生鮮マグロのロングライフチルド(LLC)を実現しました。2019年度は同社の養殖マグロの全体出荷量29,000本のうち、5,000本を「鮪錦®」として販売しました。

【写真】ロングライフチルド養殖本マグロ

ロングライフチルド養殖本マグロ「鮪錦®」1kg

【写真】ロングライフチルド養殖本マグロ

ロングライフチルド養殖本マグロ「鮪錦®」ラベル

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環境にやさしい エビの陸上養殖

2011年に国内でのバナメイエビの陸上養殖の基盤研究を開始し、2016年より事業化のための研究(フィジビリティスタディ)に着手してきました。
養殖方法には陸上施設での「閉鎖式バイオフロック法」を採用。これは、使用する飼育水の量を必要最低限に抑制し、飼育水槽内の微生物集合体(バイオフロック)に水を処理させるもので、従来の飼育方法に比べ環境負荷も低減できます。近年ヨーロッパや東南アジアで実用化が進んでいますが、日本国内では初の試みです。日本国内に供給されるエビは、多くが冷凍の輸入品でしたが、これにより、鮮度が良く生食が可能で、投薬をしない安全安心な養殖えびをお届けできるようになりました。
2017年より一部を出荷し、2018年9月より業務用食材「白姫(しらひめ)えび」として全国に向け数量限定で発売しています。

【写真】白姫えび有頭セミIQF

白姫えび有頭セミIQF

【写真】竜宮の白姫えび有頭500g
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マサバの循環式陸上養殖

ニッスイとニッスイのグループ会社である弓ヶ浜水産株式会社は、日立造船株式会社との三者で国内初となる大規模なマサバ循環式陸上養殖の共同開発に着手することに2019年2月15日合意しました。この共同開発は、ニッスイおよび弓ヶ浜水産が保有するマサバ養殖の知見と日立造船が保有する水処理技術を組み合わせて、鳥取県米子市に建設予定の実証施設を拠点に行われ、2019年6月に着工、2020年5月から稼働をスタートしました。2023年3月末までを開発期間とし、同年4月の事業化を目指しております。

【写真】マサバ循環式陸上養殖実証施設
【写真】弓ヶ浜水産(株)米子養殖センター(全景)<

弓ヶ浜水産(株)米子養殖センター(全景)

本実証施設で取り組む課題

①飼育水中の固形物除去の効率化

システム内で発生する残餌、排泄物などの固形物は、飼育水の水質悪化の要因となるため、速やかに系外に排出する必要があります。日立造船の流体シミュレーション技術(水槽内の水流をコンピュータ上で再現する技術)を活用し、固形物除去の効率化を目指します。

②硝化処理の効率化

養殖魚から排出される排泄物や残餌由来のアンモニアは、養殖魚にとって毒性が高いため速やかに分解除去が必要です。この硝化処理に、日立造船が開発した、工場排水などの生物処理で多くの実績を有する浮遊性ろ材を活用した硝化処理システムを適用して効率を上げ、硝化設備のコンパクト化、イニシャルコストの低減を目指します。

③ランニングコスト低減の為の省エネ化

システムの効率的な運転手法の開発や運転制御の導入等により省エネを図り、電気代等のランニングコスト低減を目指します。

④生産技術、養殖管理技術の確立

養殖魚にとって最適な生育条件(水温・水質・水流・光周期等)を見出し、それらを人為的にコントロールする生産技術・管理技術を開発し、高い養殖生産性を実現することを目指します。

今回の共同開発を通して、システム全体のパッケージ化により競争力のある陸上養殖システムを構築し、国内での循環式陸上養殖の産業化を目指します。これによって持続可能な水産物の安定的供給への寄与を狙います。

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岩手県でのサケマス類養殖事業化試験に参加

ニッスイとニッスイのグループ会社である弓ヶ浜水産株式会社は、岩手県の新おおつち漁業協同組合(上閉伊郡(かみへいぐん)大槌町)(注)、大槌復光社協同組合、および東京都の(一財)漁港漁場漁村総合研究所との5者間で、2019年1月、大槌町における新規事業創出の観点から、サケマス類養殖の事業化試験の実施に向けた協働を目的とする協定を締結しました。
ニッスイおよび弓ヶ浜水産は、新おおつち漁業協同組合が実施する大規模サケマス類海面養殖の事業化に向けた試験養殖に参加します。この試験養殖は、新おおつち漁業協同組合を中心とし、大槌町、地元事業者および漁村振興の総合シンクタンクが協働して行うものです。わたしたちはこれに、ニッスイグループが有するサケマス類の養殖に関する知見やノウハウなどを提供し、岩手県沿岸漁業と漁村の振興、そして新たな事業機会の創出を目指します。また、弓ヶ浜水産は、大槌町内に現地事業所を設立した上で新おおつち漁業協同組合に加入し、試験養殖に参加します。

(注)新おおつち漁業協同組合:大槌町南部の大槌湾と北部の船越湾を管轄。いずれも三陸特有のリアス式海岸で黒潮と親潮が交差する豊かな水産資源が集まる好漁場で、ワカメ・コンブ・ホタテ・カキなどの海藻・貝類の養殖やサケ・サバ・ワラサなどの漁業を行っている。今後、水揚げの安定と各事業の拡大を目指し、養殖業の振興に取り組んでいく計画。

system, 日本水産株式会社 CSR部CSR課, 外部協力者, 日本水産株式会社 広報課, 日本水産株式会社 人事部人事課