Environment 環境

フードロス

リード文

フードロスとは、まだ食べられるはずの食品が捨てられてしまうことです。現在、世界のフードロス発生量は年間で10億トンと言われています(注1)。日本では、食料自給率はカロリーベースで約38%(2022年度)と低く(注2)、多くを輸入に頼っていますが、その一方で2022年度には年間472万トンものフードロスが発生しています(注3)。また大量の食品が廃棄されている現状とは反対に、世界には依然として飢餓の問題が存在し、深刻な飢えや栄養不足に陥っている人々が約7億人いるとされます(注4)。
2019年5月、日本では食品ロス削減推進法が公布されました(2019年10月施行)。その中で言及されているSDGsのターゲット「2030年までに食料廃棄を半減させる」への貢献はもちろんのこと、法律で記された事業者の責務を真摯に受け止め、積極的にこの問題に取り組んでいます。

(注1):UNEP(国連環境計画)「食品廃棄物指標報告2024」(2024年)
(注2):農林水産省「令和5年度食料需給表(確報)」(2023年)
(注3):農林水産省、環境省、令和4年度推計
(注4):FAO(国際連合食糧農業機関)「世界の食料安全保障と栄養現状2024年報告」(2024年)

サプライチェーン全体を通したフードロスの削減

【図版】サプライチェーン全体を通したフードロスの削減

(注)フードバンク:品質に問題はないものの販売に適さない食品と、食べ物を十分に手に入れることのできない人々を結ぶ団体。

ニッスイグループは食品を取り扱う企業の責任として、フードロス部会を中心に国内事業所の生産、流通、販売・消費段階におけるフードロス削減、従業員の意識向上、一般消費者を対象とした活動など、サプライチェーン全体を通した取り組みを行っています。

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推進体制‐フードロス部会

フードロス部会では、国内グループ全体で事業におけるフードロス削減と従業員の意識向上のための取り組みを進めています。

【図版】推進体制
サステナビリティ委員会
  • 委員長:代表取締役社長執行役員(CEO)
  • メンバー:全執行役員、社外取締役
  • 事務局:サステナビリティ推進部
  • 報告先:取締役会
  • 開催頻度:年6回
フードロス部会
  • 部会長:執行役員(QA部門・サステナビリティ推進部管掌)
  • メンバー:品質保証部、SCM部、食品生産推進部、コンビニエンス事業部
  • 事務局:サステナビリティ推進部
  • 開催頻度:年4回
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目標と実績

長期ビジョン「GOOD FOODS 2030」/中期経営計画「GOOD FOODS Recipe1」および「GOOD FOODS Recipe2」における目標と実績は下記の通りです。自助努力で削減可能な動植物性残渣(生産過程で発生する魚の非可食部や、野菜の芯や外葉などを除く)および製品廃棄量に関して目標を設定し、取り組みを行っています。

指標 対象範囲 実績 KPI
2022年度 2023年度 2024年度 2024年度目標
中期経営計画
「GOOD FOODS Recipe1」
2027年度目標
中期経営計画
「GOOD FOODS Recipe2」
2030年度目標
長期ビジョン
「GOOD FOODS 2030」
動植物性残渣
(基準年度:2017年度、単位:原単位)
ニッスイ
国内グループ
21.1%削減 20.5%削減 12.8%削減 20%削減 25%削減 30%削減
製品廃棄量
(基準年度:2020年度、単位:総量)
ニッスイ個別 17.6%増加 9.3%削減 20.5%削減 - 30%削減 50%削減

環境データ

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生産段階での取り組み

限りある資源を無駄にせず環境負荷を低減するためには、まず何よりも「フードロスを発生させないこと」が重要です。ニッスイグループではこの考えのもと、生産段階からフードロスの発生抑制に取り組んでいます。生産現場では工程の見直しや生産設備の調整などの改善活動を推進しています。また、生産計画の最適化や在庫管理の徹底により、過剰在庫や廃棄リスクの低減にも取り組んでいます。

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流通段階での取り組み

商品輸入時に発生する物流事故や外箱の破損によるフードロスを抑制するため、外装段ボールの強度向上や荷物の積み付け方法の工夫に取り組んでいます。合わせて、現場担当者に対する積み付け指導や、発生要因をまとめた動画教材を用いた教育も実施しています。

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販売・消費段階での取り組み

賞味期限の年月表示化

フードロス削減のため賞味期限表示を見直す取り組みを進めています。2019年7月1日製造分より、プライベートブランド品を除くすべての缶詰製品で賞味期限の年月表示化を開始しました。その際には、品質が保たれているかどうかを確認する保存試験を行い、賞味期限の延長が可能なことを確認しています。これらの効果として、サプライチェーン全体でのフードロス削減に加え、物流における効率化が期待されます。

【写真】SuiSuiオープン うまい!鯖匠 さば水煮

賞味期限の延長

賞味期間が長くなることにより販売・消費段階でのフードロスの発生が抑制されることを期待し、賞味期限の見直しや延長に取り組んでいます。これまで、魚肉ソーセージや、ねり製品、常温食品、冷凍食品など様々な商品について、官能評価および科学的分析により品質への影響がないことを確認した上で、賞味期限を延長してきました。今後も引き続き、賞味期限延長に取り組んでいきます。

【写真】おさかなのソーセージ
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フードロスの有効活用の取り組み

食品の寄贈

2008年度より、支援の必要な人々に食料を提供するフードバンク団体であるNPO法人セカンドハーベスト・ジャパンへ冷凍食品を寄贈しています。フードバンクとは、品質には問題がないものの販売に適さなくなった食品と、食の支援を必要とする人々とをつなぐ仕組みです。児童養護施設や母子支援施設など福祉施設への食料支援を通じて、食品の有効活用と社会貢献の両立を図っています。2024年度の主な寄贈先と寄贈実績は別表のとおりです。
また、2024年12月に消費者庁が公表した「食品寄附ガイドライン」をふまえ、社内における「食品の寄贈に関するガイドライン」および「食品の提供に関する合意書」を整備し、食品寄贈の拡大と仕組みの強化に向けた取り組みを進めています。

2024年度の主な寄贈先と寄贈実績

寄贈先 寄贈品 寄贈実績(kg)
セカンドハーベスト・ジャパン 冷凍食品、常温食品 5,400
全国食支援活動協力会(ミールズオンホイールズ) 冷凍食品、魚肉ソーセージ 790
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 常温食品 490
やまがた福わたし 冷凍食品 170

アップサイクル

グループ会社の株式会社チルディーでは、パンの加工食品製造過程でやむを得ず発生するパン耳などの未利用食品を、資源として有効活用するアップサイクルの取り組みを進めています。具体的には、自社工場で発生するパン耳を原料として、外部でエタノールを製造し、そのエタノールを配合した除菌アルコールを再び自社工場内の衛生管理に活用しています。さらに、パン耳を活用したラスク風商品の開発・販売も行っています。

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サンドイッチ加工過程で発生するパン耳

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バイオエタノール化

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社内で除菌アルコールとして活用

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パン耳を活用したラスク風商品

養殖魚の有効活用

グループ会社の弓ヶ浜水産株式会社では、一次加工の過程で発生する魚の頭部や内臓、ヒレ、中骨といった副産物を余すところなく資源として有効活用する取り組みを進めています。また、活用が難しい小型魚は地元の水産高校や企業と連携し、共同で商品化することに取り組んでいます。
また、有効活用が難しいものについては、食品リサイクル法に基づき、飼料化を最優先にリサイクルを推進しています。

図

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意識啓発の取り組み

従業員への意識啓発​

従業員への意識啓発の取り組みとして、2024年度サステナビリティ通信で「フードロス削減」を取り上げました。

サステナビリティ活動の社内浸透

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サステナビリティ通信

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