ニッスイグループでは豊かな海を守り、水産資源の持続可能性向上を図る主な施策の一つとして、ASC認証やMSC認証などの取得と、これらの水産エコラベルを表示した水産物の活用に取り組んでいます。
MSCをはじめとする水産物の認証プログラムでは、FAO(国際連合食糧農業機関)が発行した「責任ある漁業のための行動規範」「水産物エコラベルのガイドライン」に則り基準が策定されていますが、持続可能な水産物への理解が広がるとともに認証プログラムの数も増え、見極めが必要となってきました。そこで、認証プログラムがFAOのガイドラインを満たしていることを検証するために、第三者機関のGSSI(世界水産物持続可能性イニシアチブ、Global Sustainable Seafood Initiative)が設けられました。GSSIは、持続可能な水産物認証プログラムを検証する国際パートナーシップです。
ニッスイはグローバルな資源持続性を推進する企業として、この活動を支援するファンディングパートナーに、2017年4月、日本企業で初めて参画しました。2023年3月現在、ニッスイグループ6社がファンディングパートナーとして加入しています。ニッスイおよびグループ会社は、水産事業に携わる企業として、水産資源の持続的利用という課題に取り組むとともに、責任のある漁業の実現に貢献してまいります。
MSC認証は、海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)が運営している、海の自然や資源を守って獲られた持続可能な漁業に対する認証制度で、代表的な水産エコラベルの一つです。MSC認証を取得した漁業で獲られた水産物は国際的なトレーサビリティが可能であり、適切な水産資源管理に繋がります。MSC認証はその信頼性と厳格性が認められ、GSSIの承認を受けており、ニッスイグループはアラスカのスケソウダラの他、複数の漁場魚種でMSC認証を取得しています。なお、2020年に行った第2回ニッスイグループ取り扱い水産物の資源状態調査では、ニッスイグループが取り扱う天然魚の28%がMSC認証を取得した漁業で獲られたものであることがわかりました。
MSC-C-51733
ニッスイの海外グループ会社であるエムデペス社(Empresa de Desarrollo Pesquero de Chile S.A.、略称EMDEPES、チリ)ほか3社が操業する、チリ第10州・第11州・第12州海域でのメルルーサ・オーストラリス(オーストラル・ヘイク)の底引きおよび中層トロール漁業・はえ縄漁業が、2019年9月24日付で、MSC認証(Fisheries Certification Requirement (FCR) Version 2.0) を取得しました。また、2020年6月、エムデペス社の所属船「UNIONSUR(ユニオンスール)」「UNZEN(ウンゼン)」の2隻および物流施設について、CoC認証を取得しました。エムデペス社は、メルルーサのドレスやフィレーなどを中心に生産しており、主にスペイン市場に販売していますが、このCoC認証の取得により、それらをMSC認証品として生産・販売することが可能になります。
2024年2月15日付で、ニッスイのグループ会社である共和水産株式会社ほか1社が操業する中西部太平洋でのカツオおよびキハダマグロのまき網漁業が、日本船籍のまき網漁船として初めてMSC漁業認証を取得しました。
ASC認証は、水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council)が運営している、養殖業が持続可能な方法で運営され、周辺の自然環境や地域社会への配慮が行われている「責任ある養殖水産物」であることを証明する認証制度です。この認証制度は自然資源の持続可能な利用を補いながら、養殖そのものが及ぼす環境への負荷を軽減し、これらに配慮した養殖業に携わる地域の人々の暮らしを支えるための社会的な仕組みの一つです。
ASC-C-01759
ニッスイのグループ会社である黒瀬水産株式会社は、2017年12月16日付で、世界で初めてブリのASC認証を取得し、2017年11月30日付で同社の加工工場についてCoC認証(注)も取得しました。黒瀬水産は国内最大級のブリ養殖企業で、同社のブランド「黒瀬ぶり」は、身が締まっているのが特徴です。ニッスイグループの養殖技術により年間を通じて脂ののった高品質なブリを安定供給しています。
ニッスイの海外グループ会社であるサルモネス・アンタルティカ社(チリ、以下SA社)は、2019年3月5日付で、トラウトのASC認証を取得し、2019年3月4日付で同社本社敷地内の加工工場についてCoC認証(注)も取得しました。なお対象の養殖場は、バイア・アカンティラーダ第1区域(Bahia Acantilada Sector 1、アイセン州)です。 サルモネス・アンタルティカ社が手掛けるトラウト・銀ザケは、ニッスイグループの販売網により世界中のマーケットで流通しており、 “FIVE STAR” ブランドとして親しまれています。
2023年現在、SA社では生産量の30%でASC認証を取得しています。また、2024年末までに生産量の100%でASC認証の取得を目指しています。
(注)CoC認証:MSCが管理運営する、加工流通過程の管理(Chain of Custody)に対する認証のことで、製品の製造・加工・流通の全ての過程において、認証水産物が適切に管理され、非認証原料の混入やラベルの偽装がないことを認証する。
非営利組織のGAA(Global Aquaculture Alliance)が2002年に運営を開始したもので、養殖における孵化場・飼料工場・養殖場・加工工場のサプライチェーンの各段階で、環境や社会的責任・アニマルウェルフェアが配慮され、食品安全性が確保されていることを認証する第三者認証プログラムです。特徴は、養殖のサプライチェーンのプロセスごとに認証する点にあり、孵化場・飼料工場・養殖場・加工工場の4プロセスを個々に認証し、その組み合わせに応じて「星」の数で示されます。
ニッスイの海外グループ会社であるサルモネス・アンタルティカ社(チリ)は、2018年8月に飼料工場(ビオビオ州ロス・アンへレス)、2019年1月に加工工場(ロス・ラゴス州チロエ島)、2019年3月に海面養殖場(アイセン州バイア・アカンティラーダ第1区域)、2019年8月に淡水養殖場(ロス・リオス州ラ・ウニオン市、ロス・タンボーレス淡水養殖場)でBAP認証を取得。4つのプロセス(種苗生産・海面養殖場・飼料生産工場・加工工場)の認証が揃い、最高ランクの「四つ星」獲得となりました。
MELは、水産資源の持続的利用や生態系保全に資する活動を積極的に行っている生産者や、そのような生産者からの水産物を積極的に取り扱う加工・流通業者の取り組みを促進させること、漁業や養殖、加工・流通段階での水産物の取り扱いについての透明性を担保し、関係事業者や消費者の選択や信頼に寄与することを目的とした認証スキームです。このスキームは、2016年12月に設立された一般社団法人 マリン・エコラベル・ジャパン協議会が運営しており、MEL認証には、1)漁業認証、2)養殖認証、3)流通加工段階(CoC)認証(CoC;Chain of Custody)の3つがあります。
2019年、MELは国際的に水産エコラベルの承認を行う「GSSI(グローバル・サステナブル・シーフード・イニシアチブ)」から承認を受けました。これはアジアのスキームとして初めてのことです。GSSIから承認された水産エコラベル(MSC、ASC等)は、事実上の国際規格として世界の大手小売業者などの調達基準に採用されます。ニッスイグループでは、MEL認証の取得に関しても推進していきます。
JFRCA
20C3600081
ニッスイグループでは水産資源の持続可能性向上のため、 水産エコラベル認証取得と普及に取り組んでいます。
2021年 | 2022年 | 2023年 | ||||
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認証名称 | 商品数 | 販売重量合計(t/年) | 商品数 | 販売重量合計(t/年) | 商品数 | 販売重量合計(t/年) |
MSC(注1) | 29 | 5,417.6 | 42 | 6,779.0 | 44 | 6,439.6 |
ASC(注2) | 2 | 30.6 | 6 | 93.2 | 5 | 54.6 |
MEL(注2) | - | - | 3 | 3,374.0 | 4 | 5,858.2 |
(注1)集計範囲:ニッスイ個別より申請した商品(各年5月時点)。
(注2)集計範囲:ニッスイ個別および国内グループ会社より申請した商品(各年12月末時点)。