Interview with Officer in Charge of Sustainability

サステナビリティ管掌役員インタビュー​

サステナビリティ管掌役員インタビュー

サステナビリティ管掌役員インタビュー

事業の成長基盤として、サステナビリティを推進します。【人物写真】株式会社ニッスイ 常務執行役員 伊勢 宗弘

Q.2022年4月にミッション、長期ビジョン、中期経営計画「Good Foods Recipe1」を発表し、長期・中期のサステナビリティのKPIを設定しました。それらがスタートし一年半がたちましたが、気付いたことや、現在考えていることを教えてください。

A.ミッションや長期ビジョンにサステナビリティが明記されたことで、従来の経済価値に加え、環境・社会・人財価値を企業価値向上につなげるというサステナビリティ経営の考え方が社内に共有されてきました。お客さまとの商談でも「サステナブルかどうか」の重要度が急激に高まっており、サステナビリティ強化がビジネスチャンス拡大につながることを実感できる場面が増えています。また、長期・中期の具体的なKPIを設定したことで従業員それぞれに当事者意識が芽生え、どうしたらKPIを達成できるかといったコミュニケーションが増えるとともに、部門の垣根を越えて試行錯誤する姿を目にすることが多くなりました。

ただ、現在のKPIは2016年に設定したマテリアリティを起点にしたものです。環境変化とともにマテリアリティ自体の見直しの必要性を感じ、すでにこれに着手しています。今秋から次期中期経営計画の策定を開始していますが、見直したマテリアリティを次期中期経営計画に織り込み、サステナビリティと事業との一体化を強めていきます。今まで以上にサステナビリティ経営を推進し、ミッションを体現し、長期ビジョンを実現したいと考えています。

Q.サステナビリティKPIの進捗状況と、サステナビリティをどのように経済価値につなげるかについて、考えを聞かせてください。

A.サステナビリティのKPIは、環境・社会・人財価値のそれぞれで設定しています。各KPIの詳細については、本サステナビリティサイトでご紹介していますので、ここでは環境価値の「CO2排出量削減」と社会価値の「健康領域商品の拡大」を例として、サステナビリティの取り組みをどのように経済価値につなげていくかお話しさせていただきます。

まずCO2排出量については、「2024年度10%削減(2018年度比)」を目標としております。2022年度は、省エネルギー活動や太陽光発電設備の設置、再生可能エネルギー由来電力の購入を進めたことなどにより、12.1%の削減となりました。順調に進んでいるように見えますが、今後の事業拡大に伴いCO2排出量の増加が予想されるため、この増加分も含めてより一層のCO2排出量削減に取り組む必要があります。ここで大事なのは、サステナビリティの取り組みを事業の成長や経済価値につなげていくことです。例えば、太陽光設備の導入は、エネルギー価格の高騰や電力供給制限などのリスク低減にも寄与しています。また、当社グループが成長領域の一つとしている養殖事業では、漁船や陸上養殖から排出されるCO2削減のための技術革新が必要ですが、こうした技術動向を捉えながら脱炭素投資を進めることで競争力につなげていきたいと考えています。現在、2050年度のカーボンニュートラルに向けたグランドデザイン策定に着手したところです。バックキャスティングの視点で検討し、2024年度中には開示できるよう進めていきます。

同じく成長領域として位置付けている健康領域商品では、「2024年度売上1.3倍(2021年度比)」を目標としております。2022年度は、医薬品原料(医薬品メーカー向けの高純度精製魚油)の北米向け輸出中断などもあり、計画に対する進捗が遅れ、1.0倍にとどまりました。国内では速筋タンパクや高付加価値商品の販売拡大を目指しますが、目標を達成するためには、やはり海外での成長がカギになってきます。欧州向けの医薬品原料はEMA(欧州医薬品庁)への申請準備を進めており、機能性原料(健康食品メーカーや粉ミルクメーカー向けの精製魚油)は今年度からMSC認証魚油の取り扱いを計画しています。このMSC認証魚油取り扱いは海外粉ミルクメーカーからの要望に応じたもので、お客さまが品質だけでなく環境や人権に配慮した調達を重視する傾向は強くなっています。こうしたことからも、水産資源の持続性確認や責任ある調達(人権)など、他のKPIを含めて包括的にサステナビリティに取り組むことが重要だと考えています。

また、当社グループは自然資本に依存したビジネスであることから、これまで進めてきた水産資源調査だけではなく、より大きな視点で自然資本との関係を捉える必要があると考えています。そのため今年度は試行的にTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の開示フレームワークで提唱されているLEAPアプローチを用いて、自然への依存と影響の関係を読み解き、リスクと機会の分析、それらの対応策を検討しました。今後も継続して自然資本に関わるリスクと機会を的確に戦略に反映していくことで、リスク低減と成長につなげ、経済価値の創出を目指します。

Q.最後に、中期経営計画とともに新たに掲げたミッションやブランディング活動ともあわせ、今後のニッスイにおけるサステナビリティの方向性を教えてください。

A.サステナビリティは当社のミッションであり、長期ビジョンでもあります。当社グループの競争力の源である人財一人ひとりがミッションに共感し、やりがいを持って業務を遂行することで、企業価値向上につながると信じています。まずは国内からとなりますが、従業員エンゲージメントを高め、従業員が生き生きと目標に向け自ら行動する組織風土を構築していきます。

また今後は、サステナビリティと事業の一体化を進め、社内外にミッションを浸透させるブランディング活動との同期もさせていきます。サステナビリティは今後確実に起こりうる環境変化であり、その取り組みを先取りすることで「人にも地球にもやさしい食を世界にお届けするリーディングカンパニー」として成長していきたいと考えています。

2023年10月

system, 株式会社ニッスイ サステナビリティ推進部, 外部協力者, 株式会社ニッスイ コーポレートコミュニケーション部, 株式会社ニッスイ 人事部人事課