世界の水産資源は枯渇化が進んでおり、国連食糧農業機関(FAO)の報告書によると、世界の海洋水産資源は資源安定状態にあるのが7%、満限利用の状態が60%、過剰漁獲状態が33%とされています。
海の恵みを受けて事業を営むニッスイグループとしては、中長期的な事業のリスクやチャンスを捉えるため、調達品の資源状況を把握しておくことが重要だと考えており、グループ会社(国内28社、海外16社)における2016年の天然魚の取引実績をもとに、資源調査を行いました。
魚種、漁獲海域、原産国、重量(原魚換算)を手掛かりに下記の、次の4つのSTEPで、調達した天然水産物の資源状況を分析しました。
ニッスイグループが取扱う天然魚種は、すり身原料や白身魚フライになる「タラ・スケトウ・メルルーサ類」、EPA・DHAの原料となる「ニシン・イワシ類」で約7割を占めます。
ニッスイグループが調達している天然水産物は原魚換算で約150万トンとなり、世界の天然水産産物漁獲量の1.6%に相当します。
上記調査フローのSTEP1~STEP3を通じて、取扱魚種のうち88%は資源状態について「心配ない」、37%は水産エコラベルの認証品であることが判明しました。
STEP1~STEP3の結果を受けて、取扱魚種のうち資源状態に「不明」「心配ある」に分類の魚種と、絶滅危惧種について国や地域漁業管理機関の資源回復計画の有無、網目規制や操業期間の制限の有無、漁業管理の有無を再調査し確認をしました。(STEP4)
その結果、配合飼料を中心として「漁業管理の有無が不明な魚種」が8.8%あることが判明したため、配合飼料メーカーと協力してトレーサビリティを高めるように努めてまいります。また、その他の不明魚種については引き続き資源状況や各漁業国のIUU漁業対策を注視し、各国に科学的な資源管理を行うようSeaBOS(Seafood Business for Ocean Stewardship)を通じた提言を行うなどの対応をしていきます。
STEP1~STEP3の調査結果で「心配ある」とされた魚種には、IUCN(国際自然保護連合)のカテゴリーCriticallyEndangered(CR)、WWF呼称「近絶滅種」、環境省呼称「絶滅危惧種ⅠA類」及びEndangered(EN)「絶滅危惧種」「絶滅危惧IB類」の魚種が含まれています。
これらの魚種については、それぞれの資源状況を注視しながら、以下のような対応をしていきます。
(重量:トン)
取扱会社 | RedList評価 | 魚種(学名) | 重量 | 評価 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
Japan | CR | 南まぐろ (Thunnus maccoyii) | 114 | 心配ある | 資源回復計画あり |
EN | なまこ (Apostichopus japonicus) | 20 | 心配ある | 資源管理あり | |
Denmark | CR | EEL (Anguilla anguilla) | 0.4 | 心配ある | オランダESF養殖 |
EN | HALIBUTWHITE (Hippoglossus hippoglossus) | 9 | 心配ある | 取り扱い見直し | |
EN | SKATE (Leucoraja ocellata) | 115 | 心配ある | 北米東海岸の規制に基づいた漁獲 |
①南まぐろ:
南まぐろ保存管理委員会が科学的調査に基づき、総漁獲量(TAC)及び締約国ごとの割り当て量を設定している。輸入に当たっては水産庁の指導を遵守しており、取り扱いを継続する。
②なまこ:
各県の資源管理の対象であり、休漁日設定、サイズ制限、種苗放流、漁場造成等の管理措置がとられているため現状程度の取扱いを継続。但し、資源枯渇が懸念される状況になれば、取扱いを漸次削減・中止する。
絶滅危惧種Ⅰ類は取扱わない。但し、お客様からの要望があった場合、保護・管理を確認し継続する
今後も定期的に水産資源調査を実施することで、常に変化する水産物の資源状態を把握し、持続性の確保を目指します。そして、将来にわたってマーケットの需要に応えられるよう、持続可能な水産物の利用に努めます。
現在、第2回調査として2019年1月~12月を対象に、資源状態の調査および分析を行っています。